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極小の中にあふれる無限77(完)

 グラトニーが目を覚ましてちょうど半年がたったその日に、フルーリーは最後の王族として、政治を民主制へと移行させた。
 フルーリーからこの国の代表者を受け継いだ――、民主制となったこの国で最初の首相として座に就いたのは、彼女もよく知る初老の政治家であった。
 首相を選出する際には選挙で決められた。とはいえ、王政であったとはいえ、この国にも選挙制度はあったので、そう真新しいことではなかった。
 ただ、どうしても関係者たちが――ひいては国民たちが、苦笑を浮かべてしまったのは、その男性の記名投票数よりも、圧倒的にフルーリーの名前の方が――無効投票である――多かったということだろうか。
 いくら彼女が最後の王族であり、この国の国民たちにとって親しみのある顔だとは言っても、まだ彼女は選挙に出馬するだけの年齢には達していなかったし、だから当然にして立候補できるわけもなく、するつもりもなく、その日を境に彼女は政治の舞台からは、少なくとも当面は姿を消すつもりでいた。
 ――とはいえ。
 そう簡単に、表舞台から消えられれば苦労はしない。
 彼女は下手なアイドルよりも人気があったのだ。
 今となって、王族という肩書きがなくなっただけ――、例えば不敬罪などが適用されることもなく、これまで以上に、あえて表現すれば、なれなれしい、不遜に接しても、ごく一般人に対するものと変わらないものとなったことになる。
 純粋に、彼女を一人の市民として――あるいは、芸能人やそれこそアイドルのようにして、より身近な存在として感じられると喜ぶ者たちもいれば、損得勘定で電卓をたたき始める者たちもいた。
 ようするに、良いも悪いも含めて、雑多に、彼女を欲する声が上がったのだ。
 新政府としてもいらぬ混乱を、また、他国への示しもあるため、彼女の身の安全を保障するつもりではいたが、――結果的にはそれらはすべて無駄に終わってしまった。
 なぜなら、そうやって様々な思惑から、フルーリーは文字通り煙のように、表舞台から姿を消してしまったからだった。
 しかし、そう大きな混乱には至らなかった。
 ファンベルン准将が手にした文面と、彼が再生した動画に、フルーリーから国民へあてたメッセージが残されていたからだ。
 そこには、きちんとした形であいさつができないことを心苦しく思います。という言葉から始まり、本題として彼女の夢がつづられていた。
 この世のすべての人が文字通り手をつなぎあえる日を目指して。
 旅をしてくる。
 そうつづられていた。
 来年の父の命日に再び帰ってくることを約束して、彼女のメッセージは終わっていた。
 追伸。
 腕利きの護衛をつけておりますので、どうか皆さまご安心ください。
 皆さまのサンライズより、愛を込めて。


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極小の中にあふれる無限76

「――――――」
 世界が柔らかな光に包まれているように見えた。
 ここはどこなのか、自分が誰なのかを、思い出すまでにわずかな時間を必要としたが、一つしかわからなかった。
 自分が誰なのかということ。
 それだけしか、思い出せなかった。
 見上げる天井は見知らぬコンクリートでできているのであろう白塗りのもので、慣れ親しんだ岩肌の凹凸がうっすらと影となって見えるものとは雲泥の差であった。
 きれいだな。
 そう思いはしたが、それでこの場所が理解できたわけではない。
 本来であれば、そんな場所に気が付いたら板となれば、咄嗟に体を起こして、状況と、今後の方針を固めなければならないはずだし、そうするようにしてきたはずのグラトニーではあったが、そんな気にはなれなかった。
 あきらめている――わけではない。
 そんな自分の変化に驚いているわけでもない。
 夢を見ていた気がする――が、その夢のほとんどは、やはり夢だったらしく忘れてしまっていた。
 ただ、大事なことに気が付いた。
 それだけは覚えているし、だから自分の命を精一杯使おうという思いだけは胸の中で息づき、静かにしかし力強く、鼓動として打ち鳴らされている。
 けれども、このよくわからない状況にあって、命を守らなければならないはずの状況でありながら、そう実行しない――のは、このかけてあるぬくもりによるものか。
 天井のそれよりも白く、一見して清潔なものだと分かる掛布団とそのカバー。
 そしてそれとは別に感じる重み。
 人一人の、上半身の持つ重み。
 自分のそれよりもずっと軽いそれを、起こしてしまうのが申し訳なく感じられて。
 だから、グラトニーは動かずに、彼女が起きるだろう時を確信して待った。
 そう、起きるだろう。
 間もなく。
 なぜか、グラトニーは確信していたのだ。
 考えてみれば妙な話だ――、まあいい。
 そうしてフルーリーを見つめながら、グラトニーは思考を回転させた。
 さて、どんな言葉でからかってやるか。
 思考に意識を割いていたグラトニーではあったが、いくつかの候補を考え付いたとき、再びフルーリーへとその意識を向けた。
 わずかに身じろいだ感触が、布団越しに伝わってきたからだ。
「――ん……」
 寝ていたことに今気が付いた様子で、フルーリーは小さく声を上げて身を起こそうとして、グラトニーの視線とぶつかった。
「…………」
 どこか不思議そうな顔をしている彼女を見て、思わず苦笑がこみ上げてくる。
「――なんて顔してんだよ……」
 二度ほど瞼をしばたたかせて、いまいちグラトニーの言葉が理解できないように首をかしげながら、一度強く目をつむった。
 もう一度開けてみれば、そこにはやっぱりグラトニーの目があって。
「おはよう」
 グラトニーがそう声をかけてきた。
「――おはよう……ござい――ます」
 どこか条件反射のようにそう答えるが、その声に張りがない。
「――お化けでも見たような顔しやがって」
 苦笑してしまう。
 まさか、あのお姫様の寝ぼけた姿を見る日が来るなど、思いもしなかった。
「寝ぼけてなどいませんわ――だいたいっ」
 心外だと口を開いたフルーリーは、堰が切れたかのように、一気にまくし立てようとしたが、それを見越してグラトニーが、
「――ありがとう」
 などといって、頭を下げるものだから、そのやりどころに困ってしまう。
 グラトニーの様子には、誠意しか感じられず、彼が本心から感謝しているのだということが伝わってきたからだ。
「ずるいですわっ!」
 そう言って、そっぽを向くので精いっぱいだった。
 目が佐俣暁には、文句の一つでも何か言ってやりたいと考えていたフルーリーだったが、いざそうなってしまうと、いうべき言葉が見当たらなかった。


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極小の中にあふれる無限75

「大馬鹿者ですわね――」
 そんな声を聴いた気がした。
 つい最近頻繁に耳にしていたように感じるその声は、その実、ずっと昔から知っている気がした。
 夢の中だろうか。
 意識と認識がなかなか像を結んでくれないが、グラトニーは自然と唇をゆがませていた。
 やれやれ、ご苦労なこった。
 それが、彼が抱いた正直な感想だった。
「人の夢に出てきてまで、ケチつけてんじゃねぇよ、バタ姫が――あ」 
 そう言って気が付いた。
 今自分がおかれている状況を。
 今は亡き母に――、元はこの国に忠誠を誓っていた彼女に膝枕をしてもらっているということを。
 彼女が成長したフルーリーを見て、フルーリーが王女殿下その人だと認識できるかはわからない――が、もしそれができていたのだとしたら、非常にまずいことになる。
 グラトニーは思い出す。
 幼少期。
 文字通り叩き込まれ続けた、この国への忠誠心のことを。
 母を亡くした要因もまた、この国の軍に絡んでいる以上、彼はそれ以降この国の在り方を否定したくてたまらず、実際そうしてきたわけだが、そんな事情まで母が解釈してくれているとは思えないし、許してくれるようには思えなかった。
 恐る恐る見上げてみると、――そこにはただまばゆい光が差し込んでいる、天井が見えるばかりだった。
 ――なるほど。
 ホッとしたといえばほっとしたが、それ以上に残念な気持ちが勝っていた。
 当然ではあるが。
 そこにはすでに母の姿はなかった。
 けれども、どこか確信があった。
 また会えるさ。
 ――夢の中で。
 それは悲しいことに違いなかった。
 もういないから、だから夢の中でしか会えないという現実。
 現実にはもう、亡くなってしまった、過去の人なのだから。
 とはいえ、彼女の命は、こうして自分が引き継いでいる。
 もう片方の血も息づいてはいるわけだが、何も血やDNAばかりが引き継いだ財産というわけではない。
 彼という人格の基礎を組み上げたのは、間違いなく母親だったはずだ。
 ――それを壊したのも、肉親である父親の方だった……、というのはまったくもって笑えない冗談のようだったが、それはそれだ。
 大切なものが何か。
 それを大切だと思って、守り抜こうと、貫こうと思えるかどうかだ。
 大切なものを大切だからといってただ護って、それで近づく他のものを徒に傷つけていいわけがない。
 ごく、あたりまえのこと――が、見えていなかった。
 見えるほどの余裕がなかった。
 それがここにきて、理解できた気がする。
 なるほど、と。
 これが、あいつが夢見るだけの理由か――と。
 バタ姫――には違いないけどな。
 そう苦笑しながら、できるできないかはともかくとして、グラトニーは思った。
 だから、俺みたいなやつが必要なんだろう。


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極小の中にあふれる無限74

 グラトニーはうなずこうとした。
 うなずこうとして、胸が痛んだ。
 見下ろしたそこには剣が付き立っていて、それを見ていると余計にじくじくと痛むようだった。
 早く終わらせよう。
 そうだろ?
 誰ともなしに問いかけて、答えるまでもなくうなずく。
 つもりだったが、また胸が痛んだ。
 どくん、どくん。
 自然と手を当ててみれば、それは確かに脈打っていた。
 どくん、どくん。
 目の前にいるあの日のままの母からは失われて等しい、命の音。
 それが確かに自分の胸に宿っていた。
 彼女から受け継がれた、確かな命の灯がそこにあった。
 胸がひどく痛む。
 母は変わらぬ口調で静かに尋ねてきた。
「もういいの?」
 母の教えを覚えている。
 母の語ったあの詩を覚えている。

 細胞や砂粒
 その一つ一つはあまりにも小さいけれど
 その一つ一つがなければ世界は成り立たない

 今この手で感じる胸も、それを感じる手自身も、彼女から引き継いだ細胞のその中にある細胞核が内包するDNAを元に形成されている。

 一秒と一秒
 振り返る間に過ぎ行くわずかに
 キラ星のごとき無限が確かに存在している

 心臓の鼓動の間にも、自立神経だのホルモンだの栄養素だの、分解だの吸収だのとあらゆる要素が複雑に、けれども確実に機能して、人の体を構成するすべてを完成させている。

 0.01、0.0001、0.000000…………
 あなたが握る掌の中には
 なにもないかもしれないけれど
 そこには確かな無限がいくつもある

 今感じる心臓の鼓動。それを感じる掌。鼓動を伝える心臓。
 それら一つ一つの中にも、それらの一瞬の一瞬の間にも、それらの隙間の中にも、ましてやここに至るまでに積み重ねられた親に先祖に、自分が親が先祖が食した命の数々と、あらゆる無限が当たり前のようにそこにあることで、気が付けば一つの命を機能させて。

 握りしめられるから手にできるものがある
 あなたが見つめるあなたの手で
 次はどんな無限を掴みますか

 めぐる無限が世界という形を成して、この世を循環しているのだ。

 その無限の中に自分はいるし、その無限を成す一部でもある。

 歴史を抱えながら循環し続けている、人間という単位の自分でさえ巨大で、人間という単位の自分でさえ矮小なこの世界の中で、こうして今という時を感じて生きていられることは、それだけで奇跡と呼んでもいいのだろう。
 地球を飛び立った宇宙船の発射角度が、わずか0.1度だけズレていたとしても、行き着く先は全く違う銀河に辿り着いてしまうように、些細な何かで、自分という今を認識できなかったのかもしれない。
 逆にだからこそ、自分は今を認識できているのかもしれない。
 グラトニーはゆっくりと目を閉じた。
 心臓の鼓動に感じ入って、静かに目を開いてみると、そこには変わらぬ母の笑みがあった。
 変わらぬ笑みだ。
 忘れていたわけではない。
 思い出そうとしなかっただけなのだ。
 記憶に蓋をして、閉じ込めて、隔離して、切り離したつもりで、忘れたつもりになっていて、でもこうしてちゃんと覚えていた。
 目の前の母さんが、――魂だのと信じたいけれど、そうだとも限らない。
 母さんを大切に思うのであれば、母さんがくれたこの命を大切にしたい。
 命を大切にしたい。
 自分に限らず。
 それに、自分の命を紡ぐことで、母さんの微笑みを覚えていられるのなら、それが一番母さんの微笑みを見続けるための方法じゃないか。
 僕がいなくなることで、母さんの生きてきた足跡を消してしまう。
 途絶えてしまう。
 それは、なんだろう。
 すごく、それはすごく申し訳ない。
 ああ。
 だから。
 だから、懸命に、生きるんだ。
 無限に繋いで、繋がれて、紡がれて、産み出された命だから。


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極小の中にあふれる無限73

 そうしてグラトニーは改めて自覚するのであった。
 ああ。
 この表情をまた見れるなんて。
 この笑顔に会えるなんて。
 それは、あの日以来思い描くこともできなかった、彼が一番大好きな母親の表情だった。
 グラトニーの目じりから涙が伝う。
 自らの手が掴んだ剣で、自らの最愛の人を貫いたあの日。
 その激しい後悔はトラウマとなり、彼の心に巣食った。
 精神の安定を図るため。
 彼はそのトラウマを、記憶ごと封印した。
 もちろん何もかもを、忘れたわけではない。
 覚えていることだってたくさんあった。
 それでも、要所をぼかすことで。
 思い出す幸せが、イコール突き落とされる高さになることを恐れた彼は、適応してきた。
 厳密に考えれば帳尻が合わないようなことも、あえて意識からそらしてしまえば、――いわば結論さえ得られれば、特に問題なく整合性が取れているように自らを誤魔化し続けてきたのだが、それももう限界だったのだ。
 静かに幼い彼が築いたバリケードは年月とともに、成長と共に、その誤魔化しが通用しなくなっていっていた。
 簡単に言えば、幼いころの自分には、この高さなら人に見られることはないと、そう感じていたバリケードが、成長してみれば、大人になる前にはそのバリケードの中が覗き込めるような高さになってしまっていたのだ。
 もちろん、周りの人たちであれば、そんなグラトニーの心の中を覗き込むようなマネはそうできるものではない。
 もちろん、知っているからこそあえてそのことに踏み込む者――例えば、グリードのような人物は実のところ少なかったのだ。
 大賢女と謳われたスロウスは、もちろんそんな彼の抱える心の闇のことを見抜き、理解し、門外漢とはいえカウンセリングを行うことで、徐々に彼の心を安定したものへと整えるための補佐を行ったりもしていたわけだが、それは例外のようなものだ。
 何よりも問題だったのは、先ほど述べたように、彼自身が成長したせいで、彼自身のトラウマを覗き込めるようになってしまったことだ。
 それはひどくあいまいに見えるものだった。
 思い出がまるでモザイクで作られているような不快さ。
 形が見えそうで、よくわからない。
 遠目に見ればなんとなくわかるのに、近づいてしまうと、何が何やらわからない。
 なにより、近づこうとすれば近付こうとするほど、よくわからなくなるうえに、まるで心臓の内側から硬い拳が突き上げてくるような衝撃を錯覚する始末であり、それだけで彼はひどく汗をかき、呼吸を荒くさせられた。
 自分の体のはずなのに。
 自分で封印したはずなのに。
 自分でさえ解くこともできず、近づくこともできず、コントロールすることもできない。
 酷くかゆくてうずいているのに、自分では掻くこともできないようなもどかしさ。
 苛立たしさ。
 発作を起こしては、スロウスの薬に頼らなければならない、もどかしさ。
 そこには楽しさを見出すことができなかった。
 生きているだけで幸せだとは思えなかった。
 生きているからこそ、生き続けているからこそ、この地獄は続くのならば、何のために生きているというのか。
 だからグラトニーは思ったのだ。
 もう、これでいい。
 これで、終わってもいい。
 酷く痛かった。
 血が肺にしみこんで、空気が泡立ち、息を吸っても吐いても、満足に酸素が入ってこない。
 そもそも、泡がこみ上げるだけで、どんどん力が抜けていく。
 苦しい。
 地獄だ。
 こんな思い――。
 結局。
 あれからずっと、死ぬこの時までずっと、地獄の中なんだな。
 そう思いながら意識が落ち――、ここにいた。
 自らの死を目前にして、自らのトラウマと向き合っている。
 しかし、こうして改めて思い出してみれば、目にしてみれば、そこにあるのは心地よく、どこか素直になれないほどにくすぐったさを覚えるような、穏やかな気持ちだった。
 穏やかなほほえみを見つめるうち、ようやく彼女の唇が動いたのを見た。
 声が聞こえたようには思えない――が、彼女が彼女の声で何を言っているのか、はっきりとグラトニーは理解することができた。
「もう、いいの?」


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