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後悔処刑35

 咄嗟にマシロはディーのその細い体を抱きしめたわけだが、何が起こったのかを理解するまでは至らなかった。
 ただ、彼女を受け止めなければならないから受け止めたのであって、それ以上のことは判らなかった。
 逆に言えば、彼女が今受け止めなければならないほどに弱っている状態だということはひどく理解していた。
 あの不吉な音。
 何かが壊れようとしている音。
 それを確かに耳にしていたから。
 そしてそれを耳にしたのはこれで二回目。
 一度目の時もディーは直後に倒れ伏した。
 一度目のそれは神から人へと身を堕とした。
 では今回は?
 脳裏をよぎっては腹に沈んでいくような不快感を伴う想像が次々と襲いくる。
 人より下の存在?
 たとえばそれはなんなのか?
 人以外の生き物を指すのだろうか?
 ――だがそれは、人の命と他の生き物の命を不平等に見立てる――いわば、人の価値観に過ぎない。
 ならば、神の価値観――あるいは世の理の価値観とは?
 生きる者のその下とは?
 ――生きぬ者ではないのか?
 浅い呼吸を短く繰り返すディーに視線を落とすと、マシロは次の時には彼女を抱え上げていた。
 いつぞやは適わなかったお姫様だっこ。
 疲れが取れているからなのか、目的とする場所が近いからなのか、軽々と抱え上げると、彼女を隣室である寝室へと運び、ベッドに寝かせつけた。
 優しく毛布を掛けてあげると、どこか息苦しそうにしながらも、それでも彼女の呼吸は徐々に落ち着きを取り戻し始めた。
 マシロは安堵のため息をつく。
 とりあえず、これ以上悪化することは今のところなさそうだ。
 不吉な思いが立ち込めていた胸に、爽やかな風が流れ込んできたような気さえする。
 大丈夫。
 きっと大丈夫。
 マシロがそう自身を落ち着かせていると、部屋の外――廊下の方からノックの音が響いた。
 フォルグスだとマシロは確信する。
 寝室のドアを静かにしめると、彼はフォルグスを出迎えた。
「おはようございます」
 老執事が恭しく頭を下げてくるのを見て、なれないなあとマシロは心中でごちた。
「お、おはよう――ございます?」
「マシロ様。そう、気を使われずともよいのです。私どもはあなた方にとっての家具だと――そうお思い頂ければ」
「そうおっしゃられても――」
 言葉遣いのことを言われているのはマシロだって分かっている。
 しかし、これまでこのような生活とは無縁の暮らしをしてきたのだ。
 年上は敬うものだと躾けられてきたし、その年上の者たちは皆マシロのことを蔑み続けてきた。どちらかなどといわずとも、マシロにとっては怖い存在であるという意識が強いため、はっきりといえばフォルグスが害のない人物だと分かっていても、それでも怯えてしまっているというのが、彼の実情である。
「――その、ディー様は?」
 部屋を見回して彼女が眠る寝室へとフォルグスは視線を向けていた。
 正確にはその入口のドア(先ほどマシロが閉めた)をだが。
「実は、その……体調を崩されて臥せっておられるのです」
 その一言にフォルグスの顔色が文字通り一瞬で変わる。
「――そ、そのような……もしかしましたら、私どもに何らかの不手際が?!」
「――え?」
 そのフォルグスの慌てぶりに、逆にマシロは呆けた声を漏らしてしまう。
 何をそんなに慌てる必要があるというのだろう?それに、不手際なんてどうして?
「いえ、その。唐突でしたでしょうか?まさか全能たる神で在られるディー様が、体調を崩すだなど在りえない――と、そう思いまして」
「あ、ああ。なるほど……」
 マシロは自らの思考を素早く巡らせた。
 どうしてこんなことに頭を回転させなければならないのかと、多少ディーを恨めしく思いながら。
「そんなことはありませんよ?ただ、――その。
 何分長旅でしたから。
 起きていただけないのです」
 だからだろうか、マシロの頭が必死の考察の上に口にするよう命じた言葉は、彼女のありもしない非をでっち上げるようなものになってしまっていた。
「そ、そう――なのですか?」
「ええ、逆に起こそうとすると不機嫌になってしまうので、仕方なく」
「な、なるほど」
 神が病に伏せることはないにしても、疲れているという説明はフォルグスにとっても納得のいくものであったらしい。
「そうしましたら、お食事の用意はいかがいたしましょうか?
 ディー様の分は後でお持ちしたほうがよろしいでしょうか?」
「そうですね。お願いできますか?あと、食事はすべて運び込んでいただくだけで結構です」
 その言葉にフォルグスはまた慌てた。自分たちが世話をするといってひかなかったが、マシロが頑なに固辞したため、残念そうに肩を落としながらも了承した。
 マシロはその姿に申し訳なさを覚えながらも、お願いという形で、スープを大目に持ってきてもらうことを告げると、わずかながらにフォルグスは救われたような表情を見せた。

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