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後悔処刑36

 部屋に運び込まれた、昨晩と比べても遜色ない料理の数々が並ぶ。
 昨晩は来客として、今朝はこの館の主としての食事ではあるが、それでも夕食と変わらないほどの豪勢さだと考えれば、その待遇の良さは段違いだった。
 器に鎮座するゆで卵なんて、それまでのマシロの人生では夢見ることしかなかった一品まで、当たり前の顔をして並んでいる。
 ――が、食欲がわくかどうかとなると別問題だった。
 なにより、ディーのことが気になる。
 彼女が床に臥せっているというのに、自分だけがこのような豪華な食事をとってもよいものかと、マシロは気に病んでいた。
 優雅に立ち上っていたスープからの湯気もなくなりかけた時、マシロはたまらず立ち上がると、隣室である寝室へと向かった。
 ディーの顔を見たからといって食欲がわくわけではないこともわかっている。
 ただ、そうしたかったのだ。
 ディーを起こさないように、ノックをあえて省略して部屋の中へと入ると、ディーはまだベッドの上で寝ていた。
 一歩、二歩――とマシロが近づくと、三歩目で彼は一度足を止めた。
 とはいえ、そう長い時間立ち止まっていたわけではない。
 次の瞬間には床に敷かれた絨毯に足を取られながらも、ベッドへと駆け寄っていた。
 ディーが起きていたのだ。
 ベッドに横たわったままではあったが、その目はしっかりと入ってきたマシロを見つめ、彼の姿を追っていた。
 マシロがベッドの横に来ると、一度目を瞑り、一呼吸おいてゆっくりと息を吐き出した。
「また――心配をかけてしまいましたね」
 身を起こすことなく、首だけをマシロへと向けてディーはいつもの口調で語りかけた。
「いっ、いえ……」
 反射的に答えるマシロだったが、
「心配してくれなかったのですか?」
 ディーの淡々としながらも、どこか皮肉を利かせたような物言いに慌てて首を振り、
「心配しました」
 素直に自分の気持ちを吐露させられていた。
「――ふぅ……」
 どこか満足げに聞こえたその吐息に、マシロは僅かながらに安堵する。
 状況が状況だけに、安心するまでには至らなかったが。
「ディー様、お腹はすいていませんか?」
 相変わらず寝たままの彼女に、少しでも元気を取り戻してほしい一心でマシロが尋ねると、
「情けない限りですが、自分で体が起こせません――ので……」
「わかりました。大丈夫ですよっ」
 答えるや否やマシロは寝室を離れ、スープ皿を抱えて寝室へと戻ってきた。
「お体に触れますけれど――」
「……今更ですよね?」
「あははははは」
 カラ笑で応じながら、マシロはディーの上半身を抱き起すと、静かにベッドの縁へと運び、彼女をそこにもたれかけさせた。
 スープは幾分か温度が温くなっていたが、火傷をしないという点においてはちょうどいい温度で、スプーンですくいディーの口元へ導くと、彼女はそのまま口にすることができた。
 咀嚼し、呑み込み、思わずため息を漏らす。
 ようやく人心地付けた。
 彼女のわずかに緩んだ頬がそのことをマシロに伝えていた。
 それを見て彼も嬉しくなる。
「さあさあ、まだまだありますよ?」
「――ありがとう。そういうあなたはご飯はもう食べ終わったんですか?」
「い、いえ。それは――」
「なら、ここで食べましょう」
 寝室で病人でもないのに食事を摂ることに抵抗を覚えないではなかったが、これ以上ディーに気を使わせるよりかはいいと、マシロは部屋を往復し、サイドテーブルへと朝食を移動した。
「私にばかりかまっていると食事ができないでしょうから、先に食べていいですよ」
「――わかりました」
 ディーが目を覚ましてくれたこと、食事を摂ってくれたことで、マシロ自身空腹を思い出していたので、この申し入れにありがたく従うことにした。
 二人でスープを分けるようにして食べ終えた時、「ありがとう」とディーは呟いた。
「――ディー様?」
 特段おかしなことではない――が、マシロは自らも空腹が癒やされたためか、幾分か取り戻すことのできた心の余裕が、彼女のどこか儚げに思わせるその一言に疑問を抱いた。
「どうかされたんですか?」
 覗き込むように尋ねるマシロの視線から逃げるように、ディーは目をそらす。
 それは何か悩んでいると、困っていると、語ることなく雄弁にマシロにその事実をつたえる。
「ディー様?」
 不安げな声で訊ねてくるマシロにディーは喉が詰まる思いだった。
 どうしたらいいのか、わからない。
 この思いを。
 不安を。
 伝えてもいいのだろうか。
 ただ、彼を困らせてしまうだけではないのか。
 でも、まさに今彼を不安にさせていることも事実だ。
 ――神であったディーでさえ知りえないことを、もしかしたら彼が教えてくれるかもしれない。
 そんな考えが浮かぶ。
 まずありえない。
 ありえないからこそ、ありえてほしい。
 そんな願望。
 それが彼女に口を開かせた。
「――怖いんです」
「怖い?――」
 急に飛び出した要領を得ないその言葉に、マシロはおうむ返しに応えることしかできなかった。
「ええ――」
「そ、その――何が……」
 ディーは喉を、胸を締め付けられるような痛みを覚えながら、それでも勤めて落ち着いた声で正直に話した。
「死ぬのが――怖いんです」

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