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後悔処刑39

 食事を済ませ栄養が体に巡り始めたのか、どうにかディーは身動きが取れるようになってきたらしく、その様子にマシロは胸を撫で下ろした。
 わずかに色が戻ってきたその頬をわずかに膨らませるように深呼吸をすると、それが気持ちの切り替えだったらしく、ディーは口調を真剣なそれに戻してマシロに語りかけた。
「そもそも、神の死――とはなんだと思いますか?」
「神様の死――ですか?」
 それは突然の問いかけだった。
「それは先ほどおっしゃられていた信仰が失われたら――という意味ではないのですか?」
「そうです」
 ディーはマシロの疑問に首肯しながら答える。
「そうではありません。それはいわば一時的な死。
 信仰さえ戻れば復活する私たちにとって、本当の意味での死というものは訪れないのです――が、その神の死というものが何を意味するのか――ということを問うています」
「本当の意味での死――」
「平たく言えば、完全消滅ですね」
 自身で口にした言葉に、今更ながらに恐れを覚えたらしいディーは、その身を震わせた。
「――完全消滅」
「まあ、学者でもないマシロには難しい質問でしょうけれど」
 対して期待などしていないと言外に告げてくるディーに、「なら聞かないでくださいよ」と心中で呟きながらも、それでもどこかそのことを悔しいと思い考えを巡らせる。
「信仰がなくなってしまう――とか?」
「――ん……、ん~。まあ、それもありますね。
 ありますけれど、それは結果の一つに過ぎません」
 信仰の対象が完全なる死を迎えてしまえば、人はそれを信仰することができるだろうか?
 いや、もともと神などというあいまいな存在に生き死にを期待することなく、敬い崇めるのが人である。
 自らの手で生み出した絵画や像をもって神自身の身代わりとして祈りを捧げる。
 そんな彼らに「神の死」などというものがどれだけ意味を持つのだろうか?そもそも、「神の死」が正しく人へと伝わるかも疑問である。
 そう考えながらも何となく思いつく答えがそれしかなかったので口にしたマシロだったが、ディーに言わせれば「結果の一つ」ではあるらしい。
 どうして信仰がなくなってしまうのか。
 その理由が分からない。
 ――が、その理由こそが答えだった。
「早い話が、信仰の根源たる神の死――とは、その神が司る概念の喪失に他ならないのですよ」
「……が、がいねん――概念?」
 普段口にすることの少ないその言葉が示す意味に辿り着けないでいたが、どうにか正しく掴むことができ――、疑問を覚えていた。
「そう、概念です」
「――――――――は、はあ」
 沈黙を挟んだのち、マシロにできることは曖昧に頷くことしかできなかった。
 判ったような判らないような。
 少なくともその正確なところまでは理解が及ばない。
「もちろん神自身の種類にもよるでしょうし、その土地その土地にあるだけの神が存在します――が、それは人が理解できないなにかを理解するために作り出した架空の神であり、そのために用意された舞台設定でしょう?」
 にべもなくディーは言ってのけた。
 冷や汗をかきながら、さすがは神様だなぁと変に感心させられるマシロである。
「いわばその人が作り出した神というものの根源ともいうべき神がいるというわけですが、ここまではいいですか?」
「――その、ディー様はその根源というわけでしょうか?」
 恐る恐る尋ねるマシロにディーは、その言葉を聞きたかったとばかりに鼻を高くし、誇ったような表情で鷹揚にうなずいた。
「そのとおりです」
 な、なるほどぉ~と相槌を打ちながらも、マシロは疑問に思う。
「人が作り出した神様たちが死んでしまったらどうなるのでしょうか?」
「彼らの死――というものは、厳密的に言えばその神自身に理由はありません。
 なぜなら人が作り出した架空の神――いわば大量生産品ですから。
 もし、その神が死ぬようなことがあるとすれば、それはその根源といえる神が死ぬときでしょうね。なぜなら、その時にはその根源が失われてしまうことになるのですから、彼らが存在できなくなってしまう――故に、信仰も当然に消え失せてしまうわけですから」
「こ、根源って偉大なんですね」
 相変わらずよく分かっていない。ものすごいことらしいということぐらいで。
「それはそうですよ?言うまでもないと思いますけれど、たとえば『死』という概念がなくなれば、何もかもが『死』ぬことがありません」
「――は?」
 唐突に語られたその事実にマシロは自身の理解を、世界観を置き去りにされてしまったような感覚を覚えた。
「――もしかして、そこまでは気が付いていませんでしたか?」
 首を軋ませるようにしてぎこちなくうなずくことしかできない。
「ですが、『死』が存在世界などあなたがたがいう地獄と何の変りもありません。
 『死』がない――代わりに他の概念は存在するわけですから」
 ちらりとマシロの表情を見れば、あいまいな笑みを張り付かせたまま硬直したままであるため、ディーは続けてより踏み込んだ説明をする。
「たとえば『食事』や『空腹』という概念が残ります。
 ですが、そのためには何かを殺さなければならない。
 『殺さ』なければ、栄養が得られない。
 死なない動物を食べて、死なない野菜を食べて、死なずに生きたままそれらを取り込んで、死なないから吸収することもできず、生きたままに排出するしかない。
 ならその栄養を得られない身体はどうなるのか。
 徐々に衰弱はしていくことでしょう。
 でも、死ねない。
 死体と変わらないほどに枯れ果てても死ぬことがない。
 死ぬことがないから、永遠にその苦しみを抱いたままありつづけるしかない」
 マシロにもようやくディーのいう『地獄』の意味が理解できた。
 なるほど。
 その無限の苦しみは『地獄』の在り方そのものである。
「今のは判りやすくするために『死』という概念を喩えましたが、どれだけ世界がおかしくなるのか分かってもらえましたね?もっとも、『概念』の喪失など私たち神でさえ予想しえないことですから、あくまでも可能性の一つだと思ってください。
 もしかしたら世界そのものが変容してしまうことだって十分にあり得るのですから」
「世界の変容……」
 ただでさえことの重大さを理解できてきたところに、新たに投げられたその可能性にマシロはまたもや置き去りにされたような気分を味わった。
「ええ、世界の変容――早い話が、この今ある世界が滅ぶ――ということに他なりません」
 告げられた言葉に、今ある世界――踏みしめる床が突如なくなり、奈落へと落ちていくような錯覚を覚えた。

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