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後悔処刑45

 視界が閉じていくのをディーは感じた。
――何故?私は今もこうして、目を開いている筈なのに――
 朦朧とする意識の中でも、ディーはそのことを自覚していた。
 はたから見ても、ディーのその両目はしっかりと開いていた。
 それなのに視界が暗く、狭まっていく。
 蝋燭の灯が燃え尽きようとするときのように、昏く、昏く、昏く沈んでいく。
――どうしてっ!どうしてっ!!――
 うわ言のように繰り返す疑問の言葉も、もはや声にならない。
 呼気で声帯を震わせることもできない。
――見せてっ!見せてッ!?――
 もはや声にならぬ祈りにも似たそれを繰り返すも、無情にもその視界は――閉ざされてしまった。
――見せて……、見せて……――
 何をどう間違ってあんな光景を見たのか。
 ちゃんと自分の目で確認したいのに――。
 強い光に目を射られたかのように、閉じた視界の中で、「嘘」であるはずの光景が離れない。
――お願いだから――だれか、うそだと――いって……?いって――
 もはや耳も満足に聞こえない。
 だから聴きたい。
 嘘だって。
 あんなのはただの錯覚だって。
 そう囁いて欲しい――のに。
 無音に近い、ただ一人闇に沈む中、それでも聞こえてくるノイズのようなもの。
 それがただの幻聴だと、間違いなんだと、嘘なんだと――気が付きたい。
 なのに目も見えず、ささやかな声さえ届かない。
 見えた嘘は――、聴こえるノイズは――。

 マシロはディーが詠唱を始めたのに気が付いたが、それはラファイトスも同じだった。
 突如始まった、場違いにもほどがあるその澄んだ音色に、初めこそ驚きはしたものの、単に目の前の女が狂ったものだと、その程度のことだと理解した。
 それは彼にとって愉悦の一つだった。
 美しい女が狂う様が酷く彼の好みだった。
 狂う隙間に正気に戻り、泣き叫びまた狂乱に落ちてくその過程が大好きだった。
 ああ、手間が省けた。
 そう思いラファイトスはディーを眺めていた――が、すぐに変化が訪れた。
 まるで自身の何もかもを絞り出して謡う彼女が差し伸べた手が発光し始めたのだ。
 いや、それは正確ではないとすぐに気が付く。
 彼女の掌の上で何かしらの光が発生して、それが彼女の手を輝かせているのだと。
 魔法だなどというものを彼は信じていなかったが、俄然興味というものが湧いてくる。
 好奇心は猫をも殺すというが、万能であり神に選ばれた自分には無縁のものだということを、彼は自身のことが故によく理解していた。
 光球となり、それはみるみる膨らんでいく。
 何が起こるのかが愉しみでならない――、そう思っていたのに。
 その玉音が鳴り止むと同時に、その光も立ち消えてしまった。
 ――代わりに目に飛び込んできたのは――、打ち付けられたのは――、赤黒い何かだった。

 マシロにはどうすることもできなかった。
 まるで首が笑っているかのように無様に痙攣することを。
 血液が抜け出ていく圧力に押されてしまっているように、ガクガク――ガクガ――クガクガクガク――と不規則に暴れることを止められない。
 痛い――すごく。
 痛い――なんてものじゃない。
 でも、痛いという言葉しか知らない――。
 早く――早く――早く――、終わって……。
 そうしないと――、そうしないと――。
 ディー様を助けられないから――。

 マシロが自身の血をラファイトスにぶち撒けたのは、ぶち撒けるように喉に切っ先を当てたのは、少しでもラファイトスの注意を自身に引き戻す為だった。
 時間を稼ぐためだった。
 片腕で喉を貫ける自信がなかった彼は、その首筋に刃を走らせた。
 狙い通り噴血がラファイトスを襲い、浴びた血を拭い取らせることに成功した。
 目に入った血はそう簡単には落ちない。
 不気味に滲み歪む視界の中ではまともに活動することもままならない。
「くそがぁっ!くそがぁっ!!やりやがったっ!やりやがったっ!!邪魔を、俺の――俺の邪魔をしやがったっぁああああぁぁああああぁああああああっ!!」
 マシロはその声を聞く。
 内心では「ざまあみろ」と痛快な思いだった。
 ――が、内心焦りもあった。
 逆上した彼が、何をしでかすか分からないという不安が。
 だから――早く死ななければならない――のに、肉体がなかなか死なない。
 死ぬほどの苦しみを覚えながら死に至れない。
 もはやサーベルの切っ先さえも力のこもらなくなったその手は取り落した。
 ぐらりと身体が傾き、なすすべもなく床に叩きつけられた。
 痛いとも感じない。
 自身の生み出した血だまりに倒れ伏し、血がたまるカーペットの上で、それでも痙攣は小刻みに続いていた。
 死なないと――、死にた――い。
 訪れる帳。
 失われていく視界――。
――よかった――
 マシロはこの日一度目の死に至った。

「あづっ??!!?!」
 意味が分からない。
 何故突然灼熱にも似た痛みを感じたのか。
 訳が分からない。
 痛みが走った左腕に視線を飛ばしたとき時、何故そこに在るべき左腕がないのか。
「腕――?腕……??」
 呟く最中に思い出したように鮮血が吹き出した。
「俺の腕ぇぇぇええええええぇぇええぇぇぇぇぇぇっ?!?!」
 この時彼の頭の中からは、自身の万能感など遠くにあるいは忘却の彼方へと消し飛んでしまっていた。
 理解を越えた状況の中、あくまでも人間に過ぎない彼は、どこまで飽きるほどに、呆れられるほどに、自身の中にあった絶対的な自信をあっさりと手放し、見失ってしまっていた。
 痛みと疑問に絶叫を上げながら、嘘だ嘘だと自身の左腕を探すと、見慣れていたはずの、さっきまで文字通り共にあったはずの肘手前から先の左腕が、物言わぬものとなって床に打ち捨てられたように転がっていた。
「俺の腕ええええええっ!!!」
 求めるように、縋りつくように近づこうとして失敗した。
 死んだはずのマシロがその身を起こしていた。
 自身が斬り飛ばしたはずの左腕は、まるで自分の左腕が身代わりになったかのように、元通りに彼と共にあった。
 そんなマシロの顔に見た。
 歪んだ笑み。
 ラファイトスはここにきて初めて感じるものがあった。
 恐怖。
 見下しきっていた虫けらにも等しい、ただ自身の引き立て役であるはずの舞台装置――だったはずの彼に、心の底から、身体の芯から震えた。
 そして――予定調和の如く始まった。
 見せつけられる地獄絵図。
 あれだけラファイトスを汚した血は、いつのまにやら彼の肌からは消え去り、血を余すほどに染み込ませていた絨毯もすっかりと乾いている。
 そして、音もなく――また。
 ラファイトスへと鮮血が襲い掛かってきた。
「ひっ、ひいぃいぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃっぃぃいいいいぃぃぃぃぃ」
 腰が抜けたラファイトスは、己の左腕のことも忘れて、その場に腰が抜けたようにしりもちをついていた。
 目が離せない。
 ちがう。
 目が離れない。
 異常を異常として認識しているのに、まるで壊れてしまったかのように身体が動かなかった。
 壊れたマリオネットのように首を激しく痙攣させ、やがてマシロは床に倒れ込み、息を引き取った。
――死んでくれ、そのまま、そのまま死んで――、起き上がるなっ!起き上がるなっ?!――
 願わずにはいられない。
 祈らずにはいられない。
 視線が釘づけられたまま、震える眼球はそれでも捉え続ける。
 見逃さないように。
 すぐに異常を感知できるように。
 ぴくりとも動かない中、わずかに心が緩み隙間を見せるのを待っていたかのようなタイミングで、マシロの体が動き出す。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘嘘嘘嘘嘘うぅううぅうぅうぅぅぅ――」
 マシロはその身体を起こしてしまった。
 ラファイトスはその思考を、声を発するのと共に全てを放棄した。

 マシロはラファイトスが半眼のまま身動きをしなくなったのを視界に捉えると、その時ばかりは勝ち誇るのにもにた優越感を覚えた。
 同時に安心もした。
 ああ、これでディー様は助かる。
 噴き出す鮮血。
 死に誘う激痛。
 失われゆく熱。
 まるで思い出したように、それらを認識していく。
 認識し、少しでも早く過ぎ去ってくれることを祈り、何も感じなくなったかと思えばすぐに初めからやり直し。
 テイク1もテイク2も関係なく、達成することもないのにただただ繰り返されるリテイク。
 声を発するのを抑えるのも、テイク4までが限界だった。
「ぐがぁぉぼぼばばばぼぼあおばおぼあばおばおぼばおばおぉぉぉぉぉ」
 口から溢れ出そうとする鮮血を粟立たせ、粘性を伴う泡が立つ音を立てながら、自ら飛び込んだ地獄に涙する。

 ディーは一人闇の中でその音を聴き続けた。
 あれだけ喚いていたラファイトスの声など一切気が付かなかったのに、その音だけは初めからずっと聴き続けている。
――ああ、泣いている――
 ディーは本当は理解していた。
――痛みに苦しみに泣いている――
 でもそれが嘘だと信じたかった。
――私がしっかりとしていれば――
 自身のふがいなさを呪い、
――私が神で在られたなら――
 至る現在を罵った。
 今の肉体は人間のそれに等しい――が、
――私は神なのに――
 この世が生まれた時から神であるはずの自分が、何もできないことが情けない。
――あんなにも助けを求めているのに――
 その声に応えることができない自身の何が神なのか。
――でも――
 果たして自分は今までどれだけの声を聞き届けてきたんだろう。
 嘆かわしい。
 過去も今も――、神と呼ばれながら。
 死神と呼ばれながら――、どれだけの声を聞き届けてこれたのだろう。
 声に耳を傾けただろう。
 ひどく滑稽に思えた。
 神である時も、人に近い今も――。
 なにもできていないではないかと。
 人に敬れ、奉られ、崇められるだけの神に、何の意味があったというのか。
 ただそれだけで天に座し、睥睨してきただけの神と呼ばれるものに、いったいどれだけの価値があったというのだろうか。
 無い。
 そんなものは皆無だ。
 無い。無い。無い。
 私は――無い。
 なにも――ない。
 今も聴くだけ。目を開いているのに目を閉じて。
 神であったころと何が違うというの?
 助けたい。
 ディーは強く思う。
 今までが間違いだったからといって、今を間違えたくない。
 救いたい。
 エゴだと罵られようと、そうしたい。
 なにもしないことには何の価値もないからっ。
 怒る。
 自身の動かない肉体に。
 熾る。
 自分の感情が。
 興る。
 呼応するように鼓動が。
 起こる。
 身体が――、
「――シロ、ま――シロ、……」
――勝手なことばかりして――、本当に――本当に――……――
 おきる――、
「どれだけ心配させれば気が済むんですかっ?!」
 おきる――、
「もっと自分のことを大事にしなさいっ!!」
 おきる――、
「あなたが私を傷つけたくないと思ってくれているように、私だってあなたを傷つけたくないっ!!」
 おきる――、
「あなたと同じだからっ!!あなたと同じだからぁっ!!!」
 奇跡が――、
「だからあなたを受け入れられます――認められますっ!!!」
 おこった。
「私はあなたと共に在り続けたいからッ――!!!!!」
 届いた。
 マシロの――耳に。
 マシロの――頭に。
 マシロの――、心に。
 届いた。
 地獄の渦中にあるというのに、その時ばかりは何もかもを忘れた。
 受け入れると言ってくれた。
 自分という呪われた存在を。
 認めると言ってくれた。
 これまで散々蔑まされ疎まれてきた自身を。
 何より――共に在り続けたいって……。
 僕もです。
 これをなんとよぶのだろう。
 突如光が射しこんできたような温もりが確かにある。
 まるで今までの人生すべてが雨に打たれ続けてきたのではないか?
 それを悔しいとか悲しいとは思わなかった。
 ただただあるのは、純白に似たあたたかな光に満たされた心象風景。
 なんだろうこれ。
 どこなんだろうこれ。
 マシロは、真っ白な頭でそれを考える。
 地獄の苦しみからも、これまでの後悔からも、積年の思いも、申し訳なさも、自己犠牲の精神も、自虐の念からも、この時ばかりは解放されて、この感情を理解しようと努める。
 ――――――――――――――――――――あ。
 ――――――――――これ…………?
 ――――――うん。
 きっとそうだ。
 これが――――――。
 幸せなんだ。

 ディーは全身に活力が駆け巡るのを感じた。
「シフララディ インシスルァフ エイヒィリグ ベンディッサディーズ(あなただけの祝福の日を綴る書物)」
 一息で詠唱を編み上げると、その手には装丁の施された一冊の書物がそこに在るのが当たり前であるように姿を現していた。
「マシロ=シュマロ」
 名を呼ぶ声に応えるように、勝手に本が開き、ページがめくられていくと、とあるページでその動きを止めた。
 ディーはそれを見るなり、そのページをひったくるようにして破り取ると、それを自身の口へと押し込み飲み込んだ。
 ディーはそのまま動きを僅かにも緩めることなく、むしろ勢いを増してマシロへと駆け寄る。
 飛び込んでくる、神の衣装をまとうディーを前にして、マシロは我に返った。
「でぃ、ディー様っ?!」
 何を――。それよりどうしてっ?!
 そう疑問を、驚きの声を口にするよりも早く、
「――え?」
 ディーはすでに拾い上げていたサーベルの切っ先で、マシロの喉を突き刺していた。

 マシロは驚愕に目を見開いた。
 受け入れると言ってくれたことに――ではない。
 それを拒絶されたなんて思わなかった。
 認めると言ってくれたことに――でもない。
 それを否定されたなどとも思わなかった。
 共に生きたい――といってくれたのに。
 呪いが返してしまう。
 この致命傷を。
 ディーを傷つけてしまうことを何よりも恐れた。
 喉を貫く金属の異物感よりも何よりもそのことが気になった。
 心配だった。
 気にかかった。
 死んでしまう――。
 ディーが。
 死にたくない――。
 ディーが死ぬから。
 あれだけ死にたいとさっきまで思っていたのに、今はこれまでのどんな時よりも死にたくないと強く思った。
 それなのに訪れようとする帳。
 闇。
 絶望の谷間。
 いやだ。
 いやだいやだいやだ。
 死にたくない、死にたくない。死にたくない。
 声にならない。
 声が出ない。
 無様に舌が意識を離れて痙攣する。
 声が出なくとも、声にならなくとも。
 マシロは祈ることしかできなかった。
 切望に涙を流すことしかできなかった。
 しかし、それを嘲笑うように。
 彼自身もまた人に過ぎず。
 人の身体の構造や仕組みには抗えず。
 その肉体は死んでいった。

 意識が戻ったマシロは、瞼を震わせた。
 そしてすぐに思い出す。
 思い出したときには反射的に身を起こしていた。
 そしてそのことを後悔する。
 見たくなかった。
 こんな光景を見たくなんてなかったのに。
 どうしてこうも確認したがったのか。
 自身を呪った。
 恨んだ。
 目の前にいるのはディー。
 そのディーの喉に。
 先ほどの自分自身の屈み合わせであるかのように、その喉には刃が突き立っている。
 茫然としてしまう。
「ディーさま……」
 愕然とそう呟くのが精いっぱいだった。
 マシロはそれっきり項垂れ――そうになったが、
「なんです?」
 はっきりとした彼女の声がマシロの耳に届いた。
 ぎょっとしてしまったのは仕方がないだろう。
 驚きに面を跳ね上げると、飽きれたようなディーの目と視線がぶつかった。
 ひどく申し訳ない気分にさせられる。
「まったく――。神である私が、こんなものでどうにかなるわけないでしょう?」
 そう、神ならば納得ができる。
 ――が、限りなく人間に近くなっていた彼女が、どうして?
 少なくともマシロは気が付いていない。
 なぜ、彼女が――彼女自身の神の衣装を纏い、目の前に在るのかを。
「解放しました」
「――かい……ほう?」
「そうです」
 そういわれたからといって、マシロには何のことだかさっぱりである。
 それはディーも理解したようで、続けて教えてくれた。
「私の理から」
「でぃ、ディー様の理?」
「後悔処刑から」
「こうか――は、はあ」
 そういえばそんな言葉を以前聴いた気がする。
 初めてディーと出会ったそのすぐ後に。
「私の理からあなたを解放したのです」
 先ほどと同じ言葉を繰り返し、ディーはマシロに開いたままにしておいた書物を彼に見せた。
 そこには、ページを破り取った後だけが残されているのが分かる。
「私はあなたの後悔を見抜き、その苦しみからの解放を思い後悔処刑を執り行いましたが、逆にあなたが呪いと呼ぶものに、その執行を返されてしまいまして――あの体たらくだった……というわけです」
「――げ……」
 うめき声しか出なかった。
 神の力でさえ跳ね返してしまう、自身の呪いの力に。
「私はこれまでしらなかった――人間というものを」
 ディーは声のトーンを落とし、恥じるように語る。
「人間の後悔とは、人間をそこから解放するためには罰を与えるしかないのだと、私は思い続けていたのです。
 何せ私は、『罰』の概念そのものですから」
 視線を落とし、申し訳ないように語る彼女のその姿は、人間のそれと同じであった。
「でも――。僅かかもしれませんが、今は理解した、理解できたつもりです」
 はにかむように笑う。
 けれども、その笑みをすぐにひっこめると、真剣な表情で、改まった顔でマシロに向き合うと、いきなり勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい――私はマシロに謝らなければならない」
 急に押し付けられた謝罪にマシロは急激に不安に襲われた。
 いやな予感しかしない。
 つい先程共に生きたいと言ってもらえたばかりだというのに、もしかしたらそれが叶わなくなってしまったのかもしれないなどと考えてしまう。
「あなたを私の理の外に置いてしまった」
 人間に過ぎないマシロの脳裏には、だからこれからは一緒にいられないという言葉が続く予感が、頭を鐘に見立てて打ち鳴らされているのではないだろうかと錯覚してしまうほどの警鐘とともに鳴り響く。
「だからあなたは今後罰を受けることがない――、私たち神と同じように……」
 沈黙が部屋に訪れた。
 それは、絶望故にでも、ましてやマシロが意味を理解しきれなかったからでもない。
 漠然と思うことは。
 死なない、老いない呪いに、罰という理から外れてしまった――、痛みを伴わないだろう、苦しみを感じないだろう未来。
 漠然としていたそれは、徐々に膨らみ、密度を増し、彼の瞳を輝かせた。
「そ、それって――」
「ええ、そうです。あなたを神と同じ――」
「ディー様といっしょにいられるってことですかっ?!」
「――――――…………」
 二人の思いがかみ合わない。
 ディーはマシロを人の身でありながらより神に近付けてしまったことに、謝罪の思いしかないのに、マシロはそんなことよりもディーと共に在り続けることを確認している。
 ディーにもマシロの思いが徐々に理解できてくる。
 思いがかみ合っていなかった時にも。
 トーンの違いを。
「――――――え、ええ。ま、まあ。そういうこと――ですねツッ――」
 マシロは歓喜のあまり思わずディーに抱きついてしまっていた。
 受け入れてくれた、認めてくれた、共に生きたいと言ってくれた人と、これからも一緒に在り続けることができることが、何よりうれしくて。
 突然のことに驚くディーではあったが、振り払うような気持ちにはなれなかった。
 どこか、あたたかいものが体の奥からこんこんとわき出てくるのを感じる。
 そしてディーは抱き返しマシロの抱擁を受け入れていた。
 人である神が自身と抱擁を交わすことを認めていた。
「共に在り続けましょう」
 我に返ったマシロが申し訳なさで恐れおののいても、彼を抱きしめる心地よさをもっと感じていたいと抱きしめ続けるディーであった。

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