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極小の中にあふれる無限0

細胞や砂粒
その一つ一つはあまりにも小さいけれど
その一つ一つがなければ世界は成り立たない

一秒と一秒
振り返る間に過ぎ行くわずかに
キラ星のごとき無限が確かに存在している

0.01、0.0001、0.000000…………
あなたが握る掌の中には
なにもないかもしれないけれど
そこには確かな無限がいくつもある

握りしめられるから手にできるものがある
あなたが見つめるあなたの手で
次はどんな無限を掴みますか

 ―――――――――――――――――――――――

 幼いころ、母が語り聞かせるその話を何度もせがんだことをよく覚えている。
 まるで、その掌の中に大切な何かが輝いているような気がして、握りしめたこぶしの中を覗き込むように目を当てて、飽きもせずにどこまでもどこまでも広がるような闇の世界で探し続けたことを。
 もちろん幼いころの話だ。
 幼いころの垣根がどこにあったのか。
 そう考えてみると、俺の場合は剣を手にした時だったと思う。
 もちろん初めは木剣を振り回して一丁前ぶっていたわけだけど、いざ剣をこの手に掴んだとき、そんな気持ちは吹き飛んでしまった。
 剣なんて吐き捨てるほどに世の中にはあるし、それを圧倒的に上回る数の刃が歴史上には存在してきたわけだし、砕かれ、折れ、朽ち、祀られ、飾られて、数多の末路に至りながら、数多の末路へ向かいながら、物言わぬそれらは人に「剣」という「物」のありようを語ってきた。
物語なんかにでてくれば竜を倒すし、もちろん現実であっても人の人生を奪う。
 「百聞は一見に如かず」とはよく言ったものだが、多くの人は百回も同じことを聞かされたら、それも違う人たちから教えられたら、それが真実だと思い込む。かつては、地動説こそが「真実」であったように。
 だからこそ剣には、手にするだけで無手の人より強くなれる気にさせる魔性のようなものを帯びている。――が、俺はそれに振り回されることはなかった。
 握り、触れた、その硬質さと重さ、冷たさに恐怖した。
 絵や写真などでは味わえない、生々しさに震えた。
 命を奪う道具の意味とその重み。
 それを手にしたとき、俺の幼いころは終わったんだと思う。
 唐突に。
 突然に。
 幕を閉じた。
 手にした剣を血が伝い、柄を握る拳を生温かい血が濡らしたあの日。
 あたたかさをくれる母さんがこの世からいなくなってしまったあの日。
 『僕の握る剣にお母さんが自らの命を刺し貫いたあの日』
 俺の幼いころは終わったんだ。
 ――この手で握った何かで、大切なものを奪ってしまった。
   だからもう――、何も手にしたくない。
 そう思ったはずなのに。
 ――何も食べず、何も飲まずにいれば、あとどれくらいで死ねるかな?
 そう思ったはずなのに。
 ――お前らが出してきた飯なんて誰が食べるもんかっ!
 そう誓ったはずなのに。
 今もこうして、俺は生きている。
 今もこうして生きている俺は、今でもしっかりと覚えている。
 カビが生えたパンの味。
 無理矢理突っ込まれたそれは、それでもうまかったことを、俺は覚えている。
 うまいと認識した時には、空腹を我慢できなくなったことを覚えている。
「飯が食いたきゃ仕事をして来い」
 そう言われたことを覚えている。
 胃袋をひもで縛りあげられるような苦しみから逃れたくて、離れたくて、俺は仕事をし続けて今も生きている。

 この国は王国として繁栄してきた。
 決して大国ではない。むしろはっきりと小国である。
 それでも周りの国々の発展に負けぬよう、精一杯に食らいつき続けてきた国だった。
 そう。
 「だった」
 過去形であるところの意図するものとは、王国が崩壊したことにある。
 元シュタル王国。
 現在その国名については正式な発表がなされてはいない。なぜなら、クーデターによりこの国が崩壊したのは、ほんの半日ほど前のこと。
 涙も乾ききらぬ少女――、元シュタル王国第一王女フルーリーズン=アンクゥティーパ=ポラリス=シュタルことフルーリーが、自らの実父である当時国王であったオリエント=ポラリス=シュタルが目の前で賊の手により殺害されたのをその目で目撃してから、まだ半日しかたっていないと言い換えることもできる。
 少女は今年で15歳になったばかりだった。
 そんな少女が、涙を流しながら、嗚咽を漏らし、時折しゃくりあげ続けて、わずかといっていいだろう半日という時間が過ぎてしばらくすると、残る涙をはねのけるようにその瞼を開き、かねてより「太陽」とさえ称えられる金の瞳をあらわにした。
 その瞳に宿るのは決意であり、誓い。
 彼女は何も実父を愛していなかったわけではない。
 むしろその逆で、心から愛していたし、尊敬もしていた。
 だからこそ彼女は、強い意志をその瞳に宿すことができた。
 亡き実父の跡を継ぐ。
 そのためには、国を取り戻さなければならない。
 父が愛したこの国を、私も愛するこの国を、賊の好きになどさせてはならない。
 父の無念は私が晴らす。
 そう少女は決意したのだ。
 決意し、目を見開いて、あらためてあたりを見渡してみて、ここがどこなのかがわからないことにいまさらながらに気が付いた。
「私はいつの間に……」
 しらぬうちに言葉が漏れ出た。
 ここがどこなのかがわからない。
 少なくとも彼女自身は、さんざん泣きはしたものの、意識を失うようなことはなかったはずだと思っているし、それは正しい。
 それなのに、ここがどこなのかがわからないのだ。
 誰かに攫われるなどした記憶も当然ない。
 かといって逃げ出した記憶もない。
 記憶にあるものは、執務室で国の重要案件を片付けているはずの父へ差し入れをしようと、自分でティーポットで紅茶を立て、同じく自分で焼いたクッキーを添えて、部屋を訪れた時の事。
 開け放されていたドアに疑問を抱きながらも、両手がふさがっていることもあり、これ幸いにと顔を出したちょうどそのとき、目の前で賊によって凶刃が振り下ろされるところだった。
 突然入り込んできた視覚情報に処理が追い付けない。
 スローモーションのように見えるそれを必死に理解しようとして、同時になんとかしなくてはと、どうやったところで間に合わないことを致命的なほどに理解しながらも考えるうち、ティーポットとクッキーを乗せたお盆を支える手への意識が散漫になったせいで、思わずそれらを取り落としてしまった。
 そのことに気が付いたのは、今にもティーポットが毛足の長い絨毯が敷き詰められた床にぶつかろうかというとき。紅茶の温度を想像し慌てて身をひねったことが幸いして、ぶちまけてしまった紅茶の飛沫が白いタイツにシミを残しはしたものの、やけどはせずに済んだ。
 ――が、それでよかった……とは当然ならない。
 音に驚いた賊が彼女へとすぐさま視線を移し、どこからしくない動揺を彼女は賊から感じ取っていた。こんな時にとは思った。こんな時にとは思ったけれど、思ってしまった。プロらしくないと。
 こんな時になんてくだらないことを考えているんだろう。
 考えてしまう。
 そんなことよりもずっと大切なことがあるのに。
 考えてしまう。
 せっかく淹れてきた紅茶が台無しになってしまった。
 余計なことばかりを考えてしまう。
 今日のクッキーは自信作でしたのに。
 余計なことばかりを考えようとしてしまう。
 それはさながら、目の前にしっかりそれと認識している、袈裟懸けに切り付けられた父の亡骸をそれ以上正しく認識しないようにするためか。
 そうこうしているうちに、どこか迷いを見せながら賊はフルーリーの前に立つと、それでも強引に彼女の手を引き、隣室である仮眠室へと彼女を突き飛ばすようにして押し込んだ。
 その暴力にあらがえず、殺しきれず、フルーリーは両手を地面について転倒してしまう。
 次には扉は勢いよく絞められた。
 目の前には執務室と同じ絨毯。
 赤い絨毯。
 それが連想させる。
 意識すまい、意識すまいと思いながら、それでも彼女はその絨毯から視線を外すことができなかった。
 圧倒的な喪失感による脱力感。
 それが彼女の行動のすべてを奪っていた。
 だから彼女は見続けた。
 赤い絨毯を。
 見続けた。
 次第に滲む視界で。
 揺らめく視界をそれと認識してからは収まらなかった。
 おおよそ半日の時間がたつまでは。

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