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極小の中にあふれる無限1

「どなかいらっしゃるんでしょう?お話をしませんかっ?!」
 フルーリーは思いを宿した瞳であたりを見回しながら、その異様な光景におびえそうになる心を殺して、決意を込めた言葉であたりに問いかけた。
 ここがどこなのかがわからない。
 それは、この場所に見覚えがない――ということには違いないのだが、いささか趣が異なった。
 見覚えもない場所ならば、文字通り見たこともない。こんな場所を想像したことさえない。
 あたりは肌色に包まれた出入り口も見当たらない、箱の中のような場所だった。
 涙を誘う要因となった、足で踏みしめていたはずの絨毯ももちろんない。
 六方すべてが余すところなく肌色という、そのくせあたりを見回すことのできる光量が、その発生源すらも見当たらないのに確保されているという異常。
 もしかしたら――そう沸き起こってくる恐怖を噛み殺し続ける。
 どれだけ考えても振り払えない。
 父の死。
 事実として横たわる、ほかでもない結末。
 そこから自然と導かれるのは、自身の結末の可能性。
 果たしてここは、死後の世界ではないのかと疑いたくなる悍ましさ。
 それでも辺りに声をかけ続ける。
 生きているから――。
 できることなのだと信じて、自身を鼓舞して。
「どなたかいませんのっ?!お話をさせてくださいっ!!」
 フルーリーの声はよく響いた。
 ここが密閉された空間ということも要因の一つには違いないが、それは彼女が持って生まれた才能の一つに違いなかった。
 持って生まれた品質。
 王の一族としての。
 声を広く届け、深く浸透させるその声が、空間を満たし壁へと吸い込まれていく。
 フルーリーは自ら打ち破り、そしてすぐに訪れた静寂に、一人戦いを挑むがごとく、注意深くあたりを見回した。
 ここに来たのは紛れもない事実なのだから、ここには少なくとも出入り口があるはずだと信じて。
 そうでなければ、自分に気づかれないように、部屋の内側一つを、それも王の仮眠室という、庶民であれば一人暮らしでも贅沢なほどの広さを持つその内側を、すっぽりとこの妙な壁や天井で囲い込んで運び出したとでもいうのだろうか?そんなこと、現実的ではない。
 先ほどまで気が付かないほどに、フルーリーには気付けなかったのだ。
 床が変わっていることでさえ。
 思いつくばかばかしいことでさえも考えるが、それよりかはここが死後の世界なのだと考えるほうが、しっくりくるのだから本当に困る。
 早くも心が細く、今にも折れてしまいそうになる。
 それでも思いを振り起し、もう一度声を出そうとしたとき。
「失礼いたしました。シュタル王女殿下」
 どこかしたったらずな、それでいて背伸びをしたような言い回しの声が、目の前から聞こえてきた。
 そう認識した時には、そこには一人の少年がどこか気恥ずかし気に、芝居がかった一礼を彼女へと贈っていた。
 声こそ上げなかった――というのは正確ではない。
 彼女には相手へアドバンテージを渡さないためにも、何があっても声を出して驚くようなことはするまいという思いはあったが、それでもこの光景には声も出せなかった。
 早い話が絶句させられてしまった。
 そこには誰もいなかったはずだ。
 誰もおらず、何が開くわけでもなく、目の前の少年はそれがさも当然とばかりにそこにいた。
 いよいよもってここが死後の夢のようなものなのではないかと、意識を放り投げだしたくなる――が、そこで彼女は気が付いた。
 目の前の少年の白さとその中にある赤に。
 すると少年もそのことに気が付いたようで、どこか恥ずかしそうにいった。
「え、えへへへ。おかしい――ですよね」
 笑みの形に細められた瞳からは、先ほどの赤が見えない。
 少年は目を閉じたまま続ける。
「生まれた時からこうなのですよ」
 フルーリーの頭に一つの言葉が閃く。
「アルビノ――」
「はい、正解です」
 少年は瞳を隠すように閉じたまま、けれどもフルーリーを正確に見据えるようにして、笑顔で手をたたいた。
「まあ、僕自身はこの姿はしていないんですけれど」
 その妙な言い回しにフルーリーは彼が何かを言い間違えたんだろうなと思った。
 何しろ子供なのだ。
 物事を正確に伝えられなくてもおかしくはない。
 おかしくはないし、そもそもがおかしくない。
「――おかしくないですよ?」
 フルーリーは目の前の少年に微笑をたたえて優しい手つきで、彼のその白い紙を撫でた。
「――ふぇ?」
 少年は驚き固まる。
 そのせいで瞼は再び開かれて、その赤い瞳がさらされていた。
 フルーリーは優しくその瞳をしっかりと見つめていう。
「おかしくなんかないですよ?むしろきれいだって、そう思いますわよ?」
 フルーリーの指の間を、子供特有のきめの細かい柔らかな神がすり抜けていく。
 その質感は、何も変わらない。
「――そ、そそそ、そんな、そんなぁ」
 少年は困ったような照れたような声で、慌てふためきながら顔を真っ赤にする。
 アルビノゆえか、より一層その赤らみが強い。
「こま、こまります。こまります。そんな、サンライズと称えられる王女様にそんなことをいわれちゃうと」
「わたくしだって人間ですよ?きれいだと思うからきれいだといったまでです」
 頭から蒸気を噴き出すようにして、いよいよ少年は小刻みに震えながらうつむいてしまう。
 こうも直接、それも目の前の麗しい、さらに加えて王女などという人物に褒められるような経験など、当然あるはずもなかったのだから。
 フローリーはそんな少年を見ながら、考えを巡らせる。
 それぐらいの知識がある程度には、この少年は教育を受けているらしいと。
 それならば、ある程度のことならば受け答えしてくれるのではないかと。
 例えば――。
「ここはどこなのでしょうか?」
 フルーリーは少年の頭を撫でるのをやめ、彼と視線の高さを合わせて、その瞳を覗き込んだ。
 少年は我に返ったように、あたりをきょろきょろと見回すと、一つ深呼吸をした。
 それで少しは落ち着きを取り戻すことができたのか、再び彼女の目を見つめ返して――また、三度小さく深呼吸をしたのち、しっかりと目は開いたままに彼女に紹介した。
「ここはですね――、僕の中です」
「――――――――」
 フルーリーにはすぐに言葉を返すことができなかった。
 ここはどこなのかと尋ねた答えが、僕の中。
 どういう意味なのだろうか。
 先ほどのよく理解できなかった言葉のこともあり、もしかしたら彼は言葉があまり自由ではないのかもしれないという思いを深めつつも、懸命に紐解こうとする。
 たんに、「僕の家です」と言いたかっただけなのかもしれないし、それが自然なように思える――が、ここに来てからの、いや、来る前からの不可思議な出来事に説明がつかない。
「ここはあなたのおうちなのですか?」
 フルーリーは結局彼の言いたかったであろうことを確認することにした。
 しかし、その言葉に今度は少年が首を捻る番となった。
「僕のおうち――おうち――、おうちとも言えなくないですが――、僕のおうちというよりかは、僕の内側といいましょうか、内面――と言いましょうか――」
 困ったなぁ困ったなぁと少年は頭を抱えるようにして、この場所をどう伝えたものかと考えを巡ららせているらしいが、しらずしらずその声が漏れ聞こえている。
 その様子に子供らしさを感じたフルーリーは、彼の言語に対する認識は正常なようだと考えを改めた。これなら、受け答えもしっかりとできるものとみて間違いはない――と、同時に、そして必然的に彼女も頭を抱えることになった。
 彼が言っていることが正しいのだとしたら、この場所はいったいなんだというのか。
 彼の内側――という言葉を、正常な思考でかみ砕くことは難しい。
 かみ砕いて飲み込める結論というものは、自身が彼自身に飲み込まれたというような結論ぐらいしかないからだ。
 あまりにもばかばかしい。
 ばかばかしいが。
 あたり一面の異様さを思い出せば、ばかばかしいという一言で片づけてしまうわけにもいかない。
 かといってこのままじゃらちが明かないし、話も進まない。
「ここはあなたの中――といわれましたけれど、私はあなたに飲み込まれでもしたのでしょうか?」
 これも妙な言い回しであることは彼女自身重々自覚している。少年は目の前にいるというのに、その少年に飲み込まれとはどういうことだというのか。そもそも少年の体は少年特有のそれであり、フルーリーのほうが成長している分大きいぐらいだというのに。
 自分がこれまで過ごしてきた日常が、まるで金づちで殴られた強化ガラスのように、細かい日無数の罅が刻まれていくようだ。
「僕が飲み込んだ――、飲み込む――う~ん……。大雑把に言ってしまえばそうなるんでしょうか?」
 けれども、それはどうにも――といっても、おおまけにまけてといった風ではあったが、そういうことらしい。
 いよいよもって自身の頭がおかしくなってしまったのではないかと、フルーリーには不安が募る。それを、本当に頭がおかしくなっているのならば、そもそもこんな風に悩みはしないはずですと、励ますことで折れそうになる心を奮わせる。
「どうしてこのような場所に、私は連れてこられてしまったのでしょうか?」
 そう、一番の問題はここだ。
 自分の今の状況を正確に飲み込めたわけでもないが、こればっかりははっきりさせないといけない。
 自身の今の価値がどれだけあるのか。
 あるともいえるし、ないともいえる。
 元国王の娘なのだ。
 もしかしたら、その娘だからと見せしめに首を落とされるのかもしれない。
 こんな時代に何をと自信の考えを笑わずにはいられないが、クーデターなどという暴挙を行うものの考えることなどわかるはずもない。
「それは――、あなたがあそこにいたからです」
 少年は申し訳なさそうにうつむきがちにそう答えた。
「あれは――、その。……、計画の外の出来事でした」
「計画?」
「はい」
 おそらくその計画というものは、向こうの立てた暗殺計画とでも呼ぶべきものなのだろう。
「あの時、本来であれば、あそこにはシュタル国王しかいないはずだったのです、そういう約束であり、手筈であったはずなのですが――、あなたがいた」
「………………」
 フルーリーは無言のままに、自身の細い顎を引いて少年の言葉を促した。
「だから僕は、あなたをかくまうことにした――みたいです」
「かくまう?」
 それも気になったが、彼が自身のことだというのに、どこか他人事のように言っていることも気になっていた。
「ええ、そうしないと、あなたは目撃者としてターゲットの一人に加わってしまいますから」
「それは――、なるほど、そこは合点がいきましたが……なぜかくまう必要が?」
 より深く訪ねてきたことに、少年はひるみつつも、それでもどこか腹をくくったような顔をして、彼女に答えた。
「僕には女性が――、女性と子供は、殺せないんです」
 目の前の少年が口にしたその言葉に、フルーリーは自身の倫理観を激しく殴られたような錯覚を覚えた。
 思わず足元がふらつきそうになる。
 目の前の少年は言ったのだ。
 女性と子供は殺せない。
 ならば、成人男性なら殺せるということになる。
 それはすなわち、少年が過去にも殺しを行ってきたことを意味する。
 少年がこの国の人間かはわからない。
 かといって、他国ならよいわけでもない。
 それに憤りを感じるだけの教育を、フルーリーは受けてきていた。
「あなたが――人を――?」
「――――ええ。そうです。僕が――です……」
 今度こそフルーリーは床に座り込んだ。
「正確には僕自身がですけれど――、大丈夫ですか?」
 何気ない気遣いのように、座り込んだフルーリーに少年は声をかけたが、フルーリーは少年の声を聞き逃してはいなかった。
「あなた自身?」
「ええ、僕自身です」
 やはりその言葉にはどこか特別な意味があるらしい。
「あなたじゃないんですか?」
 ひどいことを訪ねているという自覚はあったが、ここを解明しないことにはきっと、このいまの現状からは逃れられないと、直感的にフルーリーは感じていた。
「それをいわれると――、僕としては逃げるわけにもいかないことだってわかっていますけれど、……僕――がそうしてきたわけではないんです」
「――その、どういうことでしょう?多重人格――ということですか?」
 フルーリーの問いかけに、少年は苦笑する。
「多重人格――といえば、そうかもしれないですけれど、そうじゃないですね、たぶん」
「ならあなたは――」
「僕は――」
 少年はどこか照れたような笑みを浮かべて次のように答えた。
「僕自身のトラウマです」

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