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極小の中にあふれる無限4

「現実ならとっくに見据えていますわっ!――王が、父が亡くなったことも、シュタル王国が瓦解したこともすべてっ!!失ったことをっ!すべてですわっ!すべて失ったことだって理解していますし受け止めてもいますっ!
 なのに、あなたは――、そんな私をあなたはッ!
 夢を見ているだのと、幻覚だのとっ?!
 ~~ッ――~~……ッ~~~~、恥を……、恥を知りなさいッ!!!」
 フルーリーは真っ向から対峙した。
 父王を殺した張本人と。
 そこには捨て身ですらない、あらゆるものを放棄してでも護り貫かねばならない一念のみがあり、その思いは青年の心を露わにさせた。
 彼は――無言だった。
 無表情――でもなかった。
 ましてや、怒りに震えるわけでもなかった。
 逆だ。
 顔を蒼褪めさせ、よろめく体を支えるように二歩、三歩と後退りした。
 青年の目は確かにフルーリーへと向けられている。
 向けられているし、彼自身彼女を見据えてもいるのだが、視線が定まらない。
 定まらない視線で見る視界に、彼は幻影を見る。
 その幻影が、彼を糾弾していた。
――お前が殺したくせにッ!――
 それはいつか耳にした声。
 それはいつか口にした声。
 フルーリーは青年の様子がおかしいことにようやく気が付く。激情が彼女から正常な判断力を奪っていたせいだ。
 ひどく追い詰められた様子で彼は、過呼吸にでもなったかのように酷い呼吸を繰り返していた。瞳は落ち着かずぐるぐると痙攣するようにせわしなく動き、表情も蒼白である。
 しかし、そこには追い詰められた獣特有の危うさが隠れているように感じられ、ここにいたったようやくフルーリーは、自身への危機感を抱いた。
 それももはや手遅れに近い――それほどまでの緊迫感。
 ふくらませ続けた風船が、今にも弾け、飛散するような――。
 その彼の目が、今――。
 確かに彼女の顔だけを一点に絞り見据え――……。
「――お前さんの負けだよ、グラトニー」
 ごみ山の一角から老婆のようにしわがれた、そのくせまだ若い女性の声がそう彼に呼びかけると、彼は一度大きく身を震わせて、その青白い顔を声がしたほうへと巡らせた。
 当然フルーリーもその一角へと視線を移せば、ごみ山だと思っていたその一部がもぞもぞと動き、ゆっくりと人が身を起こすところだと理解した。ごみに埋もれるように寝そべっていたらしいその人物は、覆いかぶさっていたカップ麺の空き容器やら、紙皿だとか、何かの食いカスと思われるものを払いのけるわけでもなく、ただ床に落下させながら這い上がるようにして立ち上がった。
「よっこら――せ……と……」
 その姿にフルーリーは愕然とさせられた。
 歳は三十五頃だろうか。まるで妙齢の娼婦を思わせるほどの妖艶さを漂わせる肉付きをしており、それを主張するようにシャツの胸元はへそまであけられている。ただしその表情にはどこか生気がなく、染めているのだろうと思われる紫色の髪は大いに痛み、乱れ、目の下には厚く濃いクマがあり、その唇も紫色をしている。不摂生極まりない生活を送っているのだろうことは、今の一連の動作や表情だけで十分に読み取れる――それはいい。個人の自由だ。しかし、その人物が、何を考えているのか、単なる趣味なのか、身にまとっているのは紛れもなく白衣だったからだ。
 何よりその白衣は、何かの液体で赤黒く汚れており、それが何なのかを想像してしまうと、無性に吐き気を覚えてしまう。思わず口元に手を当ててしまったことは致し方ないといえるだろう。
 紫髪の女性はフルーリーの様子に気が付くと、のろのろと視線を下げ、にへらと嗤った。
「あ~、あ~、すまないねぇ。勘違いさせちまったねぇ。こりゃ、あれだよ。いつぞやにぶちまけたケチャップだから安心しておくれよ、フルーリーズン=アンクゥティーパ=ポラリス=シュタル王女殿下?」
 その言葉を鵜呑みにしたわけではないが、ここがよくわからない――それでも少なくとも敵地だろうということを思い出したフルーリーは、唾を飲み込むと平静を装った。
 けれども、彼女が先に口を開くより先に、紫髪の女性がごそごそとポケットから小ぶりなビニール袋を取り出した。中には薬剤なのだろうか?丁寧に折られた紙片が収まっていた。
「――王女様がいるってのに、すまないねぇ。今はこっちが先なんでね。
 グラトニー――、薬だ」
 蒼褪めた表情を浮かべていたグラトニーと呼ばれた青年は、おぼつかない足取りで、ごみを降り積もった雪をかき分けるようにして彼女のもとまで進むと、その包みを受け取り、部屋の奥へと姿を消した。
 そこに、フルーリーが口を挟めるような余地はなかった。
 何しろ青年は今にも気を失ってしまいそうな顔色をしていたし、薬を受け取るまでの流れも、彼の体調を考えれば自然なものに彼女の目には映ったからだ。それはすなわち、これが一度や二度のものではないということを意味しており、早期に対応すべきことが明らかだったからだ。
 そしてフルーリーは確かに目にした。
 彼女――、紫髪の女性が、青年をどこか愛おしむような眼で見つめていることを。
 だから、紫髪の女性がまたぞろ自分へと視線を向けなおしたとき、フルーリーは盗み見てしまったような気分になり、口をうまく開くことができなかった。
「――重ね重ね、すまないねぇ。――まったく、なんど『すまないねぇ』といっているか思い出して数えなおすのも面倒な話なんだが――、本当に申し訳なかったよ。あれは訳ありでね?」
 そう言いながら女性は、気だるげに首をかしげるようにして、青年が下がったほうを見ようとして、途中でフルーリーへと向き直った。
「あたしとしては、子供のケンカに口を挟むのもどうかと思ったんだが――、うん。ちょいと、あの子にはダメージが大きすぎたのでねぇ?口を挟ませてもらったよ。
 それにしても、『お久しぶり』だねぇ?王女殿下」
 まったくついていくことの事態のなかで、突如発された「お久しぶり」という単語に思考がひきつけられ、フルーリーは目の前の女性を改めて見つめなおした。
 目の前の女性は依然会ったことがあるような口ぶりであるが、フルーリーの記憶には彼女のような女性は存在しなかった。特徴的な紫髪にも見覚えなどない。
 やつれきった彼女の顔を改めてみると、右目の下にいわゆる泣きボクロがあることに気が付き、そのことが頭の中にひっかかった。
 なぜ、その泣きボクロが気になるのか最初はわからなかった。
 なので、逆に泣きボクロで思い出せる人物を呼び起こしてみる。
 その情報に呼び起こされた女性は、一人しかいなかった。
 一人しかいない。
 一人しかいないが、似ても似つかない。
 彼女がまとっている白衣だ。
 疑う。
 記憶を疑う。
 情報を疑う。
 しかし、一度明確なイメージを呼び起こしてみれば、それは今目の前にいる彼女と重なり合った。
 記憶の彼女は、燃えるような赤い髪をしていた。
 記憶の彼女は、その髪以上に派手な口紅を引いていた。
 どれだけの夜を寝ずに過ごそうとも、化粧を忘れることなく、また上手に利用して、誰にも疲れを悟らせなかった。
 その髪と唇の色は、彼女の情熱そのものだった。
 ――だが。
 その彼女は投獄されたはずなのだ。
 王の暗殺を企んだという大罪が故に。
 夥しい投薬と、女性であれば目を耳を閉ざしてしまいたくなるほどの拷問がなされ――、結果、すべてを洗いざらいに白状し、最終的には豚の餌にされた――とまで言われる彼女の名前を、確かにフルーリーは知っていた。
「――大賢女……、プラタナス――?」
 漏れ出た人名に、紫髪の女性は目を丸くした。
 次いで、彼女は「ふっ――」と息を鋭く吐くと、額を片手で押さえて盛大に笑った。
「あはははははははっ――、まさかっ、まさかねぇっ。王女――、王女殿下の口から、懐かしい呼び方を聞けるなんて思いもしなかったよ――あははははははは」
 フルーリーは茫然と彼女を見た。
 そのどこか傲慢さを思わせる笑い声には聞き覚えがあったからだ。
 目の前の女性は、それほどまでにこの国へ多大な貢献と――、絶対的な悪を刻み付けた。
 ただ、それでも。
 彼女はハスキーまではいかないにしても、女性にしては太い声をしてはいた。――が、ここまで、老婆のようにしわがれた声をしてはいなかった。
「あはははは――はは――……はぁ――」
 狂ったような笑い声は、ぜんまいが切れたかのようにして収まると、プラタナスらしき女性は濁った眼をフルーリーへと向けた。
「すまないねぇ。はしゃぎ過ぎちまったよ。でも――うん、やっぱりあんたは……、うん。ますますきにいったねぇ。プラス五点ってとこだね」
 何点満点中の、素点が何点で、加算式なのか、加減するものなのかも定かではないが、それは彼女にとっての尺度なのだろうと、フルーリーは気にしないことにした。
「それで――その、プラタナスはどうしてこのような場所に?」
 その問いかけに、プラタナスは一度大きくため息を挟んだ。
 どんよりとした視線のままに、緩やかに首を左右に振って、彼女は問いに答える前に訂正をした。
「ありきたりかもしれないけれど、ここじゃあたしは『大賢女プラタナス』でも、『大罪人プラタナス』でもないんでね――。――スロウスと、そう呼んでおくれ」
 以前の彼女を知るフルーリーには、その言葉は飲み込みにくいものだった。

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