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極小の中にあふれる無限5

 プラタナス――改め、スロウスの言葉をどうにかみ砕く。かみ砕いて、咀嚼し、嚥下する。
 すると、フルーリーの感性にパチリと火花のように一つの考えが沸き上がった。吐き気を覚えそうな嫌悪感とともに。
「もしかして、あなたは――。元から――」
「違うよ――といっても、信じちゃもらえないかもしれないけどねぇ」
 フルーリーが言い終える前に、彼女の言葉を予め予想していたらしいスロウスは気だるげに肩をすくめて、自嘲気味に笑った。
「あたしゃ――むしろ逆なのさ」
「逆?」
 漠然と結論だけを述べる彼女の話し方は当時の彼女の話し方と同じだった。そうして相手に興味を抱かせることができれば、彼女の垂らした釣り糸に喰い付いたようなものだ。
「その前に――ちょいと……時間をもらうよ」
 スロウスは言いながらまた白衣のポケットをまさぐったかと思えば、一本の金属製の棒状のものを取り出し、その先端を自らの首筋に当て、反対側を親指で押し込んだ。カチリと何かが挟まるような音がし、彼女がどこか不快感を伴うむずがゆさをこらえるような表情を浮かべたことで、その行為が注射なのだろうということをフルーリーは理解した。
「ちょいと――ね。よし――効いてきた、効いてきた。
 諸事情でこいつを使わないとあたしはろくにしゃべることもできなくなっちまってるんでね」
「――それは、……何のお薬なんですの?」
 フルーリーは恐る恐る尋ねた。あんな形状をした薬物――それが麻薬などの類のものであるという想像が、このような状況だからだろうか、彼女の脳裏によぎったからだ。さっきまでの気だるげな彼女の様子を思い出し、もしかしたらそのときは薬が切れていたからなのかもしれないと関連付けてしまった。
「――お脳のお薬さね――。お姫様が考えているようなお薬と、そう大差はないよ」
「なっ――」
「それより、話を戻すけどいいかい?この薬もそう長い時間は持たなくてねぇ。どこで話を中断させたか――、逆……、そう、逆さね。あたしはここにいたから王様の暗殺を企んだ――わけじゃない。王様の暗殺という濡れ衣を着せられたことでここの連中に、グラトニーに助け出されたんだよ」
「――――――」
 スロウスの言葉は、確かにそのまま鵜呑みにしていいような内容ではなかった。
 彼女の言っていることが正しければ、確かに彼女は冤罪を負わされ、拷問にかけられているさなかに助けられ、彼女の言を借りれば、この組織の人間たちによって救助されたのだろう。
 それはあまりにも筋が通り過ぎていた。
 そういう筋書きが用意されていたという可能性を思い起こしてしまうほどには。
 何しろ相手はかの「大賢女」なのだ。もし、彼女の語った内容こそが、真実の逆であったのだとしたら、彼女は見つからないためにここに潜伏し続けているということになる。フルーリーはスロウスの言葉をそのまま信じ込んでしまっていいものか、判断が付かない。
「自己の弁護なんて、たいした意味も持たないんだろうけどね――、それもことがことだけに。
 だから、あたしは信じてほしいだのとはいわない」
 彼女はここに来て初めて、フルーリーの知る信念をそのまま宿したかのような鋭い目つきで元王女の目を見据える。
「これでも医者で、科学者だ。
 証明しなければ認められないことが当たり前だと確信しているんでね。それが自分のことだからと言って、融通を利かすようなマネ――、したかないのさ」
 フルーリーは大賢女と言われた偉人の信念を見た思いだった。磨き抜かれ洗練されたその思いは、彼女もよくしるものだった。王の一族に生まれたが故、同じように崇拝だとか狂信と似たそれらの強い一念を抱えるものばかりが彼女の周りにはいたからだ。そうでもなければ、王族と言葉を交わすことなどできやしない。
 少なくとも、スロウスの語る信念に限っては本当なのだろう。信念に限ってはだが。
「――そいつが言っていることは本当だぞ」
 聞こえた青年の声――グラトニーの声がしたほうへと視線を向ければ、彼は胸の中心を親指でぐりぐりとマッサージでもするように抑えながら、先ほど入っていった戸口からこちらの部屋へと戻ってくるところだった。
「俺が言っても信用ないだろうが、本当だ。――にしても、スロウス。いつも言っているが、もう少し言い方というものがあるだろうが」
「何の話だい?」
 そうとぼけるスロウスの表情は、いたずらを楽しむ子供のようだ。
「――『お脳の薬』だよ。
 見てみろ、姫さんあんたがジャンキーかなんかだと思っている風じゃねぇか」
「そういわれてもねぇ。ジャンキーといえばジャンキーには違いないさ」
「事情が事情なんだ、それを話せよ――――いい、俺が勝手に話す」
 グラトニーの言葉の途中で浮かべたスロウスのにんまりとした笑みを見た彼は、憮然とした表情で言うと、スロウスは「すまないねぇ」と応じ、彼の語る自分の話を楽しもうとするかのように、どこか試すような微笑をたたえて、彼が話し始めるのを促した。
「こいつは冤罪をかけられた――はめられたんだ。んで、時代錯誤も甚だしいが拷問にかけられることになった。ここまではいいか?」
「時代錯誤――そのとおりですが、わが国は拷問など――」
 そう。
 このご時世に、ましてや先進国の一角に数えられたシュタル王国で、拷問などあり得る話ではなかった――、少なくとも表向きには。
「本当に言っているのかい?俺たちが何をしたか忘れたわけでもないだろう?『このご時世に暗殺は時代錯誤ですか?』お花畑で夢見るお姫様?」
「――――――そんな……、うそ――ですわ」
 フルーリーはとてもそんな話は信じられないと、茫然とした表情で力なく首をふる。
「巷で耳にしたことぐらいはあんだろ?『夥しい投薬と、女性であれば目を耳を閉ざしてしまいたくなるほどの拷問がなされ――、結果、すべてを洗いざらいに白状し、最終的には豚の餌にされた』ってよ。そう、あれは半分が本当で、半分が嘘だ。
 まあ、俺たちが発信源なんだけどよ」
「なぜそのような……」
「なぜ?簡単なことだろ?『薬物投与』に『拷問』。この事実を知るやつらのことを考えてみりゃわかるんじゃねぇのか?俺たちからのメッセージだよ。真実を知っているってな。
 そして後半は脅し文句だな。豚の餌ってのは民衆を喰い付かせるためってことでもあるんだが。ようするに、余計な真似をしなければこちらも真実を暴露するようなマネはしねぇから、死人として放っておけというメッセージなのさ――話を戻すぜ?」
 フルーリーは無言でゆっくりとうなずく。
「そうはいっても、今言ったのは『結末』ってやつだ。そうだろ?」
 どことなくその話しぶりがスロウスに似ているなと、フルーリーは思った――が、疑問があった。
「『薬物投与』が原因なのでは?」
 さっきグラトニー自身が語ったことだ。
 信じたくはないが、拷問が真実なのだとしたら、薬物投与も真実だったということになる。
「あいつらの薬物投与が原因じゃねぇ」
「あいつらの?」
 じゃあ、誰が?
「スロウス自身の薬物投与が原因なのさ」
「なっ――」
「こいつは、『大賢女』とまで呼ばれた女だぞ?
 その知識の利用価値は、良いも悪いもなく、この国どころか世界の科学技術を三歩進められるとまで言われていたことぐらい、あんただってしってんだろ?
 だから、この国の馬鹿どもはこいつからすべてを奪おうとし――、濡れ衣を着せた。
 けれども、そのことを察知したこいつは、そいつらに先んじて自らに投薬を施したんだ。
 この国の暴走を防ぐためにな。
 あらゆる投薬をされても、あらゆる辱めを受けても、精神を壊されないように、破壊されないように、おのれの自意識を飛ばし、肉体的にも仮死状態の一歩手前にまで追い込む劇薬をな。
 俺たちもこいつの知識が欲しかった――、だから助けた。
 ――が、正直見つけたときは、俺達でも胸くそ悪くなる状態だった。
 あとはこっちで手当てして、看病して、服用後きっかり一年がたったとき、こいつは目を覚ましたらしい――、本人曰くな」
「おかげで目を覚ました時は満足に立ち上がることもできなかったわけだがね」
 そういってスロウスは「反省反省」と小さく笑う。
「ふん――、反省するならそんなことよりも、劇薬とやらの後遺症のことを反省しやがれ」
「あはははふふ――、すまないねぇ」
「後遺症?」
「ああ」
「そう、後遺症さね。劇薬にはつきものだろう?おかげであたしは、さっきの薬を使わないと――あれも劇薬ではあるんだが、夢見心地といった具合なんだよ。
 ろくに物事なんざ考えられやしない。いやあの時は、あの薬しか手元になかったのは本当に失敗だったよ」
「ちなみにさっきこいつが薬使ったと思うけど、並の人間に使おうものなら、それだけで本当にお脳が火星辺りまで飛んで行っちまうような代物らしいからな。間違っても手を出すんじゃねぇぞ?お姫様?」
 フルーリーは慌てるように両手を振り、全力で拒絶した。

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