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極小の中にあふれる無限6

「白雪姫の林檎(スノーホワイトアップル)――ってのが、私が名付けたその薬の名前なんだがね?実は解毒剤の用意をしてもいたのだよ?」
「おい――そりゃ初耳だぞ?身体検査したときにも何も出なかったはずだ」
 スロウスはその言葉を待っていましたとばかりに笑みを浮かべた。
「白雪姫の林檎なんだ。その解毒剤は王子様のキスに決まっているだろう?」
「はぁっ?!――大体それが本当なら、あんたが拷問を受けた時にでも解毒されてたんじゃねぇのかっ!!?」
 グラトニーの意見こそ自分が得たかった言葉だとしたり顔をするスロウスだったが、真っ赤になって憤然と喰い付いてくる生きのいい獲物を前にして、こらえきれないとばかりに笑い出した。
「なんだいなんだい、本気にしたのかい?本気にしちゃったのかい、ええ??冗談に決まっているじゃないか。
 そもそもが、そもそもがだよ?あんな連中の中にあたしが望むような『王子様』がいたとでも本気で思ったりしちゃったのかい?」
 笑い転げるスロウスを前にグラトニーは憮然とした表情をしていたが、やがてどこかあきらめたようにため息をつく。
「勘弁してくれ。俺がその手の冗談が苦手なの、わかってんだろ?」
「おやおや。あっさり白旗かい?あふふふふ――すまないねぇ。
 ただ、解毒剤は存在しているし、その名前も『王子様のキス(キス・オブ・プリンセス)』っていうのも、嘘じゃないんだがね。
 ただ、用意していたのはその実物じゃあない。
 ここにさ」
 するとスロウスは自分のこめかみを人差し指で指さした。その爪は長く伸び、毒々しい紫色のマニュキアで彩られていた。
「――つまり、現存はしないってことですわね?」
 そのしぐさを読み解いたのはフルーリーだった。
「おや?さすがは聡明だねぇ。
 大体考えてもみなよ。
 あたしの仕込んだ薬だ。当然あいつらはあたしの研究成果をまさぐることだろう。そうなったら、解毒剤もいつかは見つかるし、その成分の解析もされちまう。
 あたしは前々から、世間に公表するデータ以外はすべてこの中だけに収めるようにしてきたのさ」
「だから、ほかの科学者たちもあなたの服用した薬を解明することができなかった」
「もちろん、蘇生治療や延命治療のようなものは連中だってしたんだろうがね?だから当然血液検査なんかも行ったんだろう。レントゲンや、MRIだってやったはずさね。
 それでもあいつらには解毒できなかったわけだが、まあそういう代物だったというわけだと。そういうことさね、あたしの研究成果ってやつはさ。
 あいつらには悪いが、あたしの研究ってやつはそれだけ抜きんでているし、危険なのさ。わかるかい?」
 フルーリーはあいまいにうなずいた。目の前にいる天才科学者のすべてがわかったわけでも、ましてや理解できたわけでもない。それでも、次元が違う頭脳の持ち主だということだけは、実感という意味で理解することができた。
「さて――と」
「おや?行くのかい?」
「すまねぇが、姫さん――頼む」
「――ははは……、まあ、それしかねぇ。あんたにはほかに頼るあてもないだろうしねぇ」
「……ありがとう」
 フルーリー本人をよそに、二人は話をまとめ、グラトニーは部屋の出口へと向かっていく。
「なにがっ?どういうことなのですかっ?」
 当然フルーリーは困惑する。
 ただでさえよくわからない状況。
 そんな状況下でここに置いて行かれるのだろうということは理解できたが、納得ができない。
「勝手にこんなところに連れてきて、私をどうするつもりなのですか?ここはどこなのですかっ!せめてちゃんと説明して――」
「なあ、姫さん」
 肩越しにグラトニーは視線を送ると、冷えた目つきで彼女を見た。
「あんた――、えらくなじんだものじゃねぇか」
「――ッ……」
「そう、なんていうか、違和感しかねぇ。
 あんたは、父親の仇である俺にここに連れ込まれた。いくらか知っている知人がいるからと言って、そのなじみ方は普通じゃねぇ。
 ――スロウスに危害を加えるとは思えねぇが、その妙な感じは懸念に値するぜ?」
 グラトニーの先ほどの発作を案じてか、スロウスが割って入る。
「おいおい、それぐらいにしておきな」
「大丈夫だ――それにこれは、俺たちの安全のためでもある」
「…………馬鹿だねぇ」
 ため息をついたスロウスに申し訳なさそうな視線を一瞬だけ送るグラトニーだったが、剣呑な眼差しでフルーリーを見る。スロウスも見て見ぬふりをしていたが、その違和感には気が付いていたのだろう。
「殺したのは確かに俺だ。そこを否定はしねぇし、――言い訳もしねぇ。……この件に関しては、思うところはあるがそれにはあんたは直接の関係はない。
 そんなあんたの傷に塩を塗り込むようなことを言わせてもらうが、――あんた、俺のことを殺したいほど憎んでいるんじゃないのか?」
 グラトニーが見つめる先のフルーリーはわずかの時間、――無表情を見せた。その表情が何を意味しているのか。怒りをこらえているのか、失望を露わにしているのか、それとも違う類のものなのか、グラトニーにもスロウスにも正確に見抜くことはできなかった。グラトニーは自身の表情、視線の維持に努めなくてはならなかった。
 二人に見つめられる中、それでもフルーリーは笑顔を作る。
 笑みの形に細められた瞼に押し出されるようにして、その目じりに涙の珠を浮かべながら。
「それでも――、それでもあなたも……。この国の民の一人ですから」
 その言葉にグラトニーは自身の表情がますます緩みそうになる。まだだ、まだ足りない。
「俺が殺したんだぞ」
 念を押す。
 辛い現実を突きつける。
 ――なのに。
「わかっています。私自身、無理矢理心の整理をつけたような状態ですので、本当のところではまだくすぶっている感情があります。
 それでも――、私はこの国の姫――でした。
 この国の姫だからこそ、失われた命よりも、生きている命を守りたい、大事にしたいと思います。今ある命を、その先に進む国を――、未来こそを大事にしたいのです」
「俺が殺し――」
 同じ言葉を重ねるグラトニーの言葉をさえぎって、
「そう決めたのです」
 フルーリーは涙の筋を作りながらも笑顔で、両手を開いてグラトニーへと歩み寄った。
 その行動が何を意味するのかを察知したグラトニーは、先んじて片手で制する。
「バタ姫様が」
 ぼそりと吐き捨てるように。
 しかしその表情には、先ほどまでの気配はなく、あきれたような雰囲気が漂っていた。
「なっ、バカですっ――」
「バカじゃなえぇ、バタだ。ちゃんと発音しただろうが、このバタ姫が」
「ちょっと、なにが。バタってなんなんですのっ!!」
 少なくとも馬鹿にされていることだけはわかるが、その意味するところまでが分からない。
「うるせぇよ、お花バタけで夢見るお姫様ってことだよ」
「なっ――」
「――だから、あんたはそこで夢見てろ」
 グラトニーの物言いには、彼女を馬鹿にしたものではない響きが込められていることを、フルーリーも感じ取れた。
「あんたが夢見ていられるように、せいぜい俺が頑張るさ」
 言いたいことだけ言ってグラトニーはそれ以上は何も言わず、部屋の外へと出て行った。

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