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極小の中にあふれる無限13

 それはグラトニーが九歳の時のことだった。
 グラトニーが母親を失い、約二年に迫ろうというときの話だ。
 当然、彼の心の傷は癒えてなどいなかったが、それでも彼は仕事をし続けていた。いや、だからこそ――か。
 逃げるように、忘れるように。
 ただただ黙って。
 ただただ忠実に。
 ただただ念入りに。
 無感動に。
 無機質に。
 空腹だけを訴えて。
 獣のように。
 いや違う。
 獣そのものだった。
 空腹に狂う、滴る唾液を拭うことすら忘れたわずか九歳の餓鬼に、畜生との違いを見出すほうが難しい。
 文字通り首根っこを掴まれ、無理やり連れてこられたところは、廃屋のような何かだった。
 乾ききらない血で斑に塗装された壁面を、まるで造形を模したような人で作られたオブジェが飾ってある、そんな場所だった。
 もしかしたらそれは、いたずらを覚えた子供のいたずら程度の発想だったのかもしれない。トイレットペーパーに水を含ませ丸めたものを、壁や天井に投げつけて、くっつけてデコレーションらしきものを施すあれだ。
 あくまでも発想は、だが。
 しかし、現状は現状として変わらない。
 バケツ何十杯もの血をぶちまけた中、壁に人間が突き刺さるという異常事態の中心に、異質なものをグラトニーは見た。
「この国だって、何も血なまぐさい事件がなかったわけじゃない。そうだろぅ?なぁ、お姫様?」
「――――、歯がゆくも」
 そう。
 血なまぐさい事件。
 具体的な何かを示しているようでそれがなんなのかを特定できないほどには、そう言える事件は少なくなかった。
 もちろん個人の価値観にもよるだろうし、立ち位置にもよるだろう。
 そして、昨日のことだって間違いなくその一つに当てはまる。
 なにも、日々平穏に緩慢に、漫然と、平和という時間を過ごしてきたわけではなかった。
「関係してくるのは、ズヤールだがね」
「ズヤール――、ズヤールの大罪祭」
 それは、フルーリーが七歳の時に起きた事件だった。
 ズヤールというのは故人の名前であり、フルネームはリースバイン=ズヤールといった。
 彼は孤児という出自にありながらも、それをばねにするかのように研鑽を重ね、やがてはシュタル王国直下の研究院、シュタル国立枢梟院(すうきょういん)に籍を置くまでに上り詰めた人物の名であった。
 なにより、今フルーリーの目の前にいる、スロウスの――大賢女プラタナスの直属の部下でもあった。
 そんな科学に明け暮れる組織のもとで、同歯車が狂ってしまったのか、王都からさほど遠くない、山のふもとにぽつんとある家屋で彼は、自らを含む二四人の命を神に捧げるための儀式という名の大量虐殺を行い、その締めくくりとばかりに村に火を放った。
 火の勢いは強く、現存する記録ではその悲惨な光景自体が残されていない。
 ただ、そこにあっただろう死体の数と、火災後の調査から、この場で少なくとも二四人が殺されたということはわかっている。
 しかし、妙なのだ。
 そこで殺されたのは男がほとんどで、女性は一人だけだった。
 ようするに、ズヤールはたった一人で、実に二二人もの男の命を奪ったことになるのだが、彼が男色家だったなどという話は残されていないし、かつて付き合っていた彼の恋人たちは、そういう方面に関しては、ごく普通の――若干まじめすぎるくらいの(この辺のニュアンスは多分に不満が含まれていたが)――男だったと、口をそろえた。
 もちろん分かれた後のことなど知る由もないが、晩年の彼を知る人物たちも、それは当時のプラタナスも、特に彼がそう言った性癖の持ち主である、あるいは内面的な事情を抱える一人だといったようなことを、違和感程度にも感じたことはなかった。
 だが、結果としてみれば男が二二人。それも年齢層も、下は一八上は四三という、男として働き盛りのものが多かった。
 何より奇妙なのは、何度鑑定をし直しても、主犯とされるズヤールの死亡推定時刻のほうが幾分か早い段階で死んでいたらしいということだった。
 多くの者たちが首をかしげる中、汚名を注ぐためにもと名乗りを上げたのは、彼が務めていた枢梟院――、それもほかならぬ大賢女その人であった。
 そして、導き出された結論は。
 二二人のうち、三番目に亡くなった。
 というものであった。

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