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極小の中にあふれる無限14

「もちろんすべての遺体を調べられたわけでもないし、少なくない推測も混ぜちゃいるんだけどねぇ。少なくともそれぐらいには最初のうちに殺されていたみたいなんだよ」
 何より奇妙なのは――、そう間をおいてかつてプラタナスその人だった彼女は続けた。
「死因が明らかに違ったんだよ」
 そこに見え隠れするのは、当時の苦渋――だろうか。
 それが何を意味するのかまではフルーリーにも読みとれなかったが。
「最初の三つの遺体に関しちゃ、ありゃだれの目から見ても他殺だったんだろうねぇ。
 それはわかるんだ。
 わからない――いや、理解はできても認めがたいとでもいうのかねぇ。それが残り一九もの遺体に共通する特徴でね?」
「な、なんですの?その、――目は」
 かつてプラタナスだったスロウスは、どこか遠くを見ながら憮然とした表情で、面白くもなさげに虚空を睨んでいた。
「いや、すまないねぇ。今にして思い返してみると、当時の己の想像力と発想力のなさにほとほと嫌気が来ちまうんだよ……。
 まあ、そのご遺体たちだがね?
 どいつもこいつも、からの一部が欠損していやがった」
「――け……そん?」
「ああ、そうさね。
 それも、まあ例えば関節から先を持っていかれたとかなら、まだわからんでもないんだが、骨だとか、構造だとか、そういったものを無視するような力で――、強引にこう、ぶちっとやったかのようにね」
 スロウスは言いながら、自らの左腕の二の腕を引っ張るようなしぐさをして見せた。
「そしてひどく欠損をしてた。
 上半身と下半身が別々になっちまってたりしてね、遺体のパーツを特定するのが難しかった。
 当時の私は、何らかの方法で証拠を隠滅したり、ねつ造するためにこんなまどろっこしいことをしたんじゃないかとも考えたんだが、そうじゃなかった」
「そうじゃなかったですって?!でしたら、今ならもうわかっていると――」
「ああ……」
 スロウスは、たまった何かを吐き出そうとするかのように、まるで紫煙を吐くみたいに長く息を吐いた。
 九つのグラトニーが見たもの。
 それは、同じようにグラトニーを見ていた。
 まるで、自分の顔も含めた姿形を知っているくせに初めて鏡に映る自分を見た動物――に似た既視感。
 これは何だろう。
 共鳴ともいえるのかもしれない。
 あるいは、共振か。
 目というセンサーを通して、互いを理解しあっているように。
 二人は驚きにも似た表情を浮かべて互いを見合っていた。
 しかして、幼い黒髪の少年がグラトニーのもとに、よたよたと歩み寄る。
 疲れているのだろう。
 精神的にも、肉体的にも。
 誰に目にもその足取りは不安定で。
 しかし、状況が少年に手を差し伸べることを拒んでいた。
 周りのオブジェと化した遺体に囲まれていては。
 その黒髪の少年こそがその製作者だと知っていては。
 ただ、対峙するグラトニーはやや趣が違って見えた。
 どうしたらいいのかわからない――というのが一番正しいのだろうか。
 いや、安易なとらえ方というべきか。
 目の前の血塗れの子供に対する忌避感や怖れといったものは、不思議となかった。
 それは年上の意地ということでもなく、見慣れた状況というわけでもなく、単に目の前の少年に敵意がないのがわかっていたから。
 なにより、グラトニーを戸惑わせていたのがそこだった。
 敵意がないのはわかる。
 けれども、どうしてこうも畜生道に堕ちたような自分を見て、彼は縋るように泣きじゃくるのかがわからない。
 自分の他人の血が染みついた手では触るわけにいかないのに――、それが自分と同じように他人の血の温度を知るものであっても。
 だから戸惑う。
 良いのか悪いのか。
 わからないから。
 判断が付かないから。
 けれども、身体は自然と動いていた。
 自らの足につまずいた黒髪の少年を、気が付いたらグラトニーは抱きしめるようにして支えていた。
 そして、感じた。
 ぬくもりを。
 子供特有のやわらかさを。
 そして、黒髪の少年はグラトニーを一度ぎゅっと抱きしめ――、気を失った。
 そこにはもう、不安そうな顔をするグラトニーはいなかった。
 責任というものをその表情に宿していた。
 護る。
 そう目がかたっていた。
「ふむ――」
 この場にはどこか不似合いな、灰色の髪の貴公子然とした青年がうなずく。
 満足のいく結果を得られたと笑みを浮かべながら。
「目は口ほどにものをいう――なんていうからね」
 そうして彼はあたりを見渡した。
 赤に濡れた世界を。
「どうしたものかな?これ――」
 そして赤に見出した。
「うん、焼こうか」
 いうが早いか、濡れた赤を猛る赤が侵食するように焼き尽くしていった。
 それが、ズヤールの大罪祭といわれる事件の結末の真相。
 この結末に至るまでに何があったのかといえば、単に黒髪の少年――今のエンヴィーを手に入れる。それが始まりだった。
 エンヴィーを手に入れるために、自分たちとは全く接点のない犯罪組織を動かしてことをなそうとした。そう、この犯罪組織は灰色の髪の青年がこの件に絡んでいることすらしらなかっただろう。
 そんな犯罪組織がことに臨んだ結果が、あの惨状である。
 エンヴィーを匿う大人たちを嬲り殺し、出てきたエンヴィーに殺された。
 どこまでも異常な事件の、常軌を逸した、経緯である。

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