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極小の中にあふれる無限16

 部屋へとやってきたのは、グラトニーとエンヴィーの二人だった。
 二人の姿からお風呂上りなのだろうということは、フルーリーにも一目でわかった。
 上気した水気を帯びつややかさを持つ肌に、その肌に張り付く乾ききらない髪。
 入ってきた二人は、しかし対照的な表情を浮かべていた。
 グラトニーの腰にしがみつくように抱き着いているエンヴィーはどこか上機嫌そうな笑みを浮かべているのに対して、グラトニーはあきれたように半眼をフルーリーとスロウスへと向けている。
 どうしたんだろう。
 そう深く考えることもなくなんとはなしに疑問を持つフルーリーではあったが、そんな気楽さとは正反対の状況に追いやられていることにすぐに気が付いた。
 足が勝手に下がろうとするのだ。
 どうして?
 自問するまでもないが、自問せずにはいられない。
 どうして自分の意志とは反対的に、表層意識を裏切って、足が下がろうとしてしまうのか。
 そしてエンヴィーを見ようとする自分が、どうしてこうも恐る恐る様子を窺うように、気付かれないように細心の注意を払っているのか。
 これではまるで――、おびえているようではないか。
 それは、この国に住まう人々を少しでも幸せにしたいと望む彼女にとっては、耐え難い屈辱であり、自身に対してこれほどまでに怒りを覚えたこともなかった。
 スロウスはフルーリーの後姿を眺めながら、彼女の内心を正確に見抜いていたが、それはむりもないのだとわずかに目を伏せた。
 エンヴィーが行ったあれは、催眠術というような類ではなく、相手の心を直接踏みにじる行為に他ならない。
 早い話がトラウマのようなものだ。
 自らの意志でそこにとどまろうとするフルーリーではあるが、それはやせ我慢にも等しい。
 寒い冬に薄着で風に吹かれるがままに耐えているようなものだ。
 けれども、スロウスはフルーリーを見守ることにした。
 いざとなれば自分が――などという、過剰な自意識などではなく、フルーリーという元王女の気高さを、一人の人間として認めたからだった。
「まったく――、スロウス?」
「……なんだい?」
 部屋に入ってくるなりどこか不機嫌そうなグラトニーが発した言葉は、スロウスに対する苦情だった。
「俺はあんたに、このバタ姫をどうにかかくまってくれってお願いしたつもりだったんだが?」
「なんだいそりゃ。八つ当たりかい?」
 そう言ってスロウスはまじまじとグラトニーの腰に引っ付いているエンヴィーを見つめた。
「――違う。そうじゃない。つか、わかっていってるだろ?」
「さあねぇ、どれのことやら?」
「今は言ってきたのが俺たちだからよかったものを――」
「ああ、そのことかい?――なるほどね。確かにこいつは不用心だったかねぇ、すまないねぇ。
 なにぶん、どこかのどちらさまかが、ちょいとオイタしてくれたものでねぇ。その後始末に時間がとられちまったんだが――」
「――……チッ」
 グラトニーにもスロウスのいう事情を察してはいた。
 だが、察していたからと言って、今この部屋に入ってきたのが自分たちでなかったらと思うと、その不用心さに苛立ちを感じずにはいられなかった。もちろん、その根幹には結局エンヴィーのことがあったわけだが。
 結局やり場のない苛立ちをスロウスにぶつけるしかなくなった格好であり、ただの八つ当たりだと自覚していることを改めて指摘されたわけで、グラトニーとしてはそこで舌打ちをして黙るしかほかなかった。
 その間もフルーリーは努めてグラトニーを見ようとしたが、どうしても彼に視点を合わせることができなかった。
 左から右へ。右から左へ。視線を移動させながら、盗み見るように彼を見ようとするのだが、ピントが合う前に目をそらしてしまうのだ。
 同時に気になることがある。
 それはエンヴィーが自分を見つめているのではないかということで。
 ずっと彼が自分のことを見ているような気がするのだ。
 グラトニーの腰に抱き着いたまま、笑顔を浮かべる彼だが、その実その笑みの形に刻まれた瞼の奥で、注意深く、蛇のように自分のことを観察しているように感じられて仕方がなかった。
 いや、実際そうやって彼はフルーリーのことを観察しているのだ。
 そこには傲慢さやサディスティックな喜びはなく、ただただ警戒するばかりで。
 警告するばかりで。
 笑顔の裏で彼は、文字通り自分が抱きしめるグラトニーを取られまいと、必死に威嚇していた。

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