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極小の中にあふれる無限17

 各々が各々の都合を背景に、客観的に今の状況を俯瞰し、自己解釈していた。
 グラトニーは、「これでいい」と思っていた。
 自分は紛れもなくフルーリーにとって親の仇にあたるのだし、そもそもああやって会話できていたこと自体が異常だったのだと。これで正常に戻れるのだろうと。そう折り合いをつけていた。
 スロウスは傍観者であることをおのれに課していた。
 そもそもが、子供同士の話なのだと。大人である自分がこれまで一緒にいて、どれだけ二人に人間らしさを――、特にエンヴィーに伝えられただろうと。
 エンヴィーは笑みを刻んだ瞼の奥からフルーリーを変わらずににらみ続けていた。
 命じるように、警告するように、願うように。今自分が掴んでいるぬくもりを、誰にも渡さないように、渡さないために。
 なにしろ、エンヴィー自身分かっているのだ。
 エンヴィーにフルーリーは殺せないと。
 いや、正しくは殺せる。
 文字通り生まれてこの方お姫様として育ってきた彼女が相手なのであれば、おそらくはたいした苦労もなく、その頸椎を捻ることができるだろう。仮に、護身術めいたなにかの指導を受けていたとしても、所詮は付け焼刃に過ぎないはずで。そんなものは、物の数にもならない。
 もちろん、グラトニーと同じように、女子供を殺せないなどというようなトラウマをもっているなどという理由でもない。――が、その理由は結局グラトニーに依存する。
 グラトニーが殺せず、殺すことを望まず、ここにまで連れてきた彼女を、本当にエンヴィーが殺そうとすれば、グラトニーはおそらく彼女を護りに入り、自分を睨みつけることだろう。
 そんな「恐ろしいこと」がこの世の中で起こってはならない――それが彼の一番の理由だった。
 よしんば、割って入られる前に殺してのけたとしても、今度はグラトニーに嫌われるなりするだろう。そうなってはこれから生きていく意味が亡くなってしまう。
 それはまごうことなき絶望というものだった。
 殺せるほどに殺してやりたいのに、殺せない。――そんなジレンマに揉まれた苦肉の策が先ほどフルーリーに行った脅しであった。
 トラウマ――それもたとえば、刃物に触れればケガを負うとか、ストーブの天板に触れたらやけどをするとか、そういった危機意識、潜在能力――要約すれば、反射を刷り込み、植え付ける。
 うっかり刃物に触れて――、熱い天板に触れて、手を引っ込めるように。グラトニーを直視しようとすると視線をそらせてしまう。
 結果的に今フルーリーに起きているそれは、そうなるようにエンヴィーが意図したものではない。やはり相手によってかかりやすさというものがあり、人によっては同じ反射の要因を植え付けられてグラトニーと対峙したら、それだけで失神するものだっている。
 だからエンヴィーは願っていた。
 このまま何事も起こりませんように――と。
 何事も起こらず、このいまの状態のまま、ほとぼりが冷めるいつかが訪れて、フルーリーを開放する日が来ますようにと。
 きっとそれは遠くないはずなのだ。
 もしかしたら今日中に行われてもおかしくはない。フルーリーという存在自体が、お荷物であることも事実なのだから。
 異物を除去したがるのは、生体反応でも、集団心理でも同じことなのだ。
 ――そして、フルーリー。
 ままならない自身に苛立ちながらも、懸命に思考を回転させ続けて、実はエンヴィーの思惑までをも正確に理解していた。
 理解して、なお苛立つ。
 苛立ちが頂点に足したときに思いついた暴挙であり、暴論であり、暴走を、一方で彼女の冷静な部分はこう思っていた。
 私はこういうところがあるのですよ。
「これはあれですわっ!一つの清算というものですわっ!」
 突如声を上げたフルーリーをほかの三人はぎょっとした表情で見た。
 そもそもがである。
 彼女を匿うためにここに連れてきているのだ。
 彼女を匿っているのは、何もシュタル国軍だけを警戒しているわけでは当然なく、むしろ自分たちにとっての身内を警戒しての事。
 グラトニーがそれでも努めて冷静さをとりなして、フルーリーの口を片手で塞ぎ、片手で彼女の利き腕である右の二の腕を握りしめた。
 彼女の体が恐怖で大きく震えたのがわかったが、そうやって彼女をおびえさせてでも、諫めなくてはならなかったのだ。
「急に大きな声だすなよ、――まだばれてねぇんだから。
 あんたが生きてここにいることがばれると、正直俺自身の命も危ないんだが、何よりあんたの身が危ない。自分の価値ぐらいわかっているんだろう?」
 フルーリーの目が不自然なほどにぎょろぎりょと動いた。
 目は完全に怒りの形をしているのに、目を動かそうと、顔を動かそうと、その視点が定まらないのだ。グラトニーの顔を正視できないのだ。
「~~っ――――ッ!」
 うめき声をあげるその感情は果たして、悔しさなのか、怖さなのか、そんなことは関係ないという怒りなのか。
「そんなことは関係ないですわっ!」
 ということで、怒りらしかった。
 怒り心頭といったところか。
 現状を理解はしているだろうに、またもや声を上げたフルーリーにグラトニーは両手で自身の頭を抱える。
 スロウスはくすくすと気付かれないように笑っていた。それに気づいたグラトニーは、たちまち憮然となり、その表情を上げるわけだが。
「さっきもいいましたわっ!これは一つの清算だとっ!そう思って甘んじてくださいましっ!!」
「――もういいから、わかったから、静かに……?」
 グラトニーの声が途切れた。
 なぜか。
 意味が分からなかったからだ。
 なぜ、フルーリーが。
 突如として自分の頬を彼女の手で挟み込んできたのかが。
 エンヴィーはそれを見たとき、自身の血の気が引いていく音を聞いた。
 彼にはそれがまるで――。
 ――フルーリーの顔がグラトニーの顔へと近づいていくそれが。
 キスを想起させて。
 だめだと。
 恐怖の声を上げそうになって――。
 石と石をぶつけあうような音を耳にして、その口の形のまま固まってしまった。

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