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極小の中にあふれる無限20

 グラトニーは咄嗟にエンヴィーのことをかばうように、彼とフルーリーとの間に自らの腕で壁を作って腰を落とした。
 それは一見すると、エンヴィーをフルーリーからかばっているようにも見えたが、その実逆で。エンヴィーがフルーリーに手を出さないように、自分の存在を見せつけることで、抑止するためのものだった。
 俺の前で女を殺すな――というわけである。
 そして非難がましい視線をフルーリーに送りつぶやいた言葉は、まさしくエンヴィーが思っている言葉と同じものだった。
「なんなんだよっ、あんたはっ!!」
 さんざんバタ姫だのと揶揄してきたのはグラトニー自身なわけだが、そんな彼にしても、この唐突さといってもいい、不意打ちのような彼女の行動には、そう非難の声を上げずにはいられなかった。
 しかし、そんな二人を前にしてフルーリーの浮かべる微笑みには、いささかの揺らぎも見られない。
「やりたいことを始めたまでですわ?
 ――さあ、エンヴィーさん?この手を取ってくださいまし?」
 グラトニーは再び感じていた。
 はっきりと。
 エンヴィーが怯えているそのことを。
 そのことが以外でならないし、そのことがいやでもあの時のことを思い起させる。
 ズヤールの大罪祭。
 検死だの実況見分だの。
 そんな事後を観察したわけではない。
 事後には違いなかったが、まだぬくもりはなつ血の匂いの中で、おびえて目を見開いていた少年のことを――惨劇の真の実行犯であるエンヴィーのことを、直接見たし、抱きしてぬくもりも感じた。
 そうして冷静になって周りをもう一度見てみれば、まるでナイフでも投げたかのように、手斧を投げつけたかのように、腕や脚が壁に、人を貫いて突き刺さっていた。
 事後――、エンヴィーの精神状態もある程度落ち着いてきたころ、彼はグラトニーにあの時のことを語りだした。
 別に促したりしたわけではない。
 きっとあの惨劇を知ってほしかったのだ。
 ほかならぬグラトニーに。
 知って、わかってほしかった。
 わかってもらえると期待して、受け止めてくれると判断して、エンヴィーはグラトニーに語った。
 怖かったのだと。
 わかるよ。そんなことをグラトニーは答えた。
 なぜなら似たような経験をグラトニーもしていたし、それ以降も食欲を満たすために幾度と繰り返してきたことだったから。
 どんなに怖くても――、逃げられない現実が目の前にあった。
 そのとき。
 エンヴィーは思ったのだという。
 うらやましいと――。
 妬ましい――と。
 自分はこんなにもみっともなく震えていることしかできないのに、目の前の大人たちは自分の大好きな人たちの命をあっさり奪ってしまった。
 手にした武器で。
 あんな武器を持っている彼らがうらやましいと。
 きっと――。
 きっと。
 ボクがあんな武器を持っていたら、お父さんもお母さんも先生も死なせなかったのに――。
 だから、手を伸ばした――と。
 手近にいた大人に。――もちろんそれは、標的であるエンヴィーを確保するために接近したが故のことだったわけだが。
 伸ばした手でその大人の履いていた迷彩模様のズボンのポケットに手をかけたのだと。
 その大人はそれを勘違いしたのか。
 何やら場違いにもつぶやいたのだという。
 エンヴィーは口には出さずに掴んだポケットを下へと引っ張ると、その大人は少し驚いた顔をして、「坊主っ!結構力があるんだなぁ」などとどこか困ったように笑いかけながら、また先ほどと同じ言葉を繰り返した。
「大丈夫!大丈夫だから――」
 何も大丈夫じゃないよね?
 エンヴィーはそう思ったのだという。何しろ――。
 お父さんもお母さんも先生も死んで――殺されて――、独りぼっちで――、なのに大丈夫って、大丈夫?――なの?ボクが?それともおじさんが??
 そんなおじさんたちが――うらやましいなぁ……。
 その後の異常を知る者たちなら当然の理解に至るわけだが、異常を認識するまえのその大人は、じゃれつくような――想像以上に強いその膂力に驚きながら、まるで引きずり込まれるように――。
「大丈夫――なのが、うらやましいの……」
 何の前触れもなく、幼子が神にじゃれついて引っ張るような感覚で、その大人の首をもいだ。
「生きているのが――うらやましいのっ」
 駄々をこねる子供のように。
 それを――、生首を。
 さながらモーニングスターの先端のごとく、投げつけたのだという。
 自分でも驚きながら――、自分でも怖がりながら――、ますますパニックに陥りながら――。
 自身の異常は周りの異常事態となり、惨劇の舞台を完成させていたのだと。
 ようするに。
 このまま、エンヴィーがもし追い詰められ続けたら?
 彼を止めなければならないような未来が、すぐそこに待ち構えているとしたら?
 最悪それは、命を奪うことでしか達成できないのだとしたら?
 グラトニーはそんな未来を拒絶する――が。
 未来が訪れることを止めることにはつながらない。
 フルーリーはまるで幼子を落ち着かせるように、エンヴィーと同じ目線の高さにまで腰をかがめてそのおびえる瞳を見た。
 エンヴィーは恐れていたのだ。
 他人から向けられる優しさに――、ぬくもりに。
 あまりにも不似合い過ぎて、――不慣れ過ぎて。
 それはかつて失ったもので。
 それは親しい人――あるいは、同種の人からしか受け取ってこなかったもので。
 ましてや自分がさげすむような、やろうと思えばすぐに殺せるような獲物に過ぎない彼女が、自分と対等に目線を合わせるなど――。
 しかし、そこに武力の行使ができなくては、こうも怯えるしか自分にはなかったのかとおののきながら――。
 サンライズと呼ばれる――、太陽のようなその瞳から自身の瞳を逃がすことができなかった。

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