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極小の中にあふれる無限22

「なにやってんだバタ姫ッ?!」
 叫ぶグラトニーは、フルーリーの正気を疑わずにはいられなかった。
 父親を殺され、拉致され、脅迫を受け、脅迫した本人と同じ部屋で脅迫された内容を強いられている――考えてみれば、追い詰められているのは何もエンヴィーだけの話ではないのだ。
 だから疑ってしまう。
 考慮してしまう。
 フルーリーが自意識を保っているかどうかを。
 もっといえば、心配していた。
 悲しみが悲観を呼び、悲観が諦観を呼び、諦観が生きる意味を捨ててしまったのではないかと。
 ただの自殺志願者の一人なのではないのかと。
 そう考えると、我を失ったエンヴィーの方がまだ対応がしやすい。
 羨望のままに動く彼は、言ってしまえば檻の中にいる空腹を抱えた肉食獣のようなものだ。
 危険ではある――が、不必要に踏み込まなければ、檻の外にまでその害が届くことはない。
 だからグラトニーはエンヴィーを抱きしめるなどして止めるのではなく、肩で、腕で、遮るようにしてその足を止めさせていた。
 フルーリーと対峙するように。
 フルーリーをとどめるために。
 こちら側へ――、彼女が地獄と称したこちら側へ越させないために、呼びかける。
 警告を。
「おいバタ――」
 ――つもりだった。
 グラトニーは見たのだ。
 燦然と輝く彼女の瞳を。
 そんな瞳を自殺志願者がするだろうか?
 自殺志願者なのであれば、ぎらついた――ナイフの照り返しのような――、危険を思わせる光を帯びるはずではないか。
 だが、彼女のそれは――、サンライズと謳われるがままのものだった。
 その瞳が語っている。
 同じ立場で、同じ場所で、対等に。
 言葉を交わそうと。
 同じ立場で、同じ場所で、対等の。
 言葉を交わそうと。
 その意思がどこから湧いてくるのかわからない――わからないが、グラトニーは自身が唾を飲み込んだことに、その音がしたことで、おくればせながら気が付いた。
 だが、だからこそ。
 そんな意思を宿したかのような瞳だからこそエンヴィーが欲しいといったのではないのか――。
「あ」
 グラトニーは間近で耳にした。
「あ――あああ――――」
 感じていた。自身の腕にとりつこうとするエンヴィーの手が、その爪を立てるようにして、食い込んでくるのを。
「あああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――」
 グラトニーがエンヴィーと向き合わなかったのにはもう一つ理由があった。理由と呼べるほどには、彼自身意識してのことではなかったのだが。
 グラトニーがエンヴィーと向き合って彼を抱きしめるように、抑え込む――ということは、まるでエンヴィーが一方的に悪いみたいではないかと。
 そう思ったからだった。
 エンヴィーのことは、少なくともここにいる誰よりも自分が知っているという自負があった。
 エンヴィーは自分と同じような身の上であることもわかっているし、自分よりも深く心に傷を負っていることもわかっていた。むしろ、自分よりも幼いころにその傷を負ったせいで、正常な心の発達がなされてこなかったのだということを理解していた。
 だから、グラトニーは声に出さずに、出すこともせずに、彼の心理が行動を通して語っていたのだ。
 けれども、それが致命的なまでに――、配慮が欠けていたことだと思い知らされる。
 誰にとっての致命的か。それはフルーリーにとっての。
 混乱に次ぐ混乱。
 追い詰められた鼠とおなじ。
 自分の領域に不用意に踏み込んでくる外敵に対して、自身よりも強い、そう、自身よりも強い意志を持つフルーリーに追い詰められたエンヴィーは、もはや反射的にグラトニーの腕を踏みつけるようにして乗り越えようとしたとき――、べしゃりと音がした。
 エンヴィーの顔に当たった、生温かさを孕んだようなぬめりけにもにた水気を帯びた何か。
 そのときのおとだった。
 そしてずるりと、重力にわずかにあらがうようにして、床へと水音にも似た音を立ててそれは落下した。
 皆がそれを見た。
 それを見て、何も言わず見続けた。
 それも、見続けていた。
 見るともなしに、その瞳を――金の瞳をエンヴィーに向けていた。
「そんなもの欲しがってどうするんだい?」
 そう口にしたその人は、手をぷらぷらとさせながら、大人として子供たちへと話しかける。
「大体お姫様も――さ、お姫様だってもんだよ。
 誰かが欲しいと言ったらくれてやる?それならくれてやった後に、別の誰かがそれを欲しいって言ったらどうするつもりなんだい?」
 言葉はわかる。
 理解できている。
 けれども、目の前に転がるそれを理解することは、すぐにできそうになかった。
 だから過去の状況に縛られたままで、今の状況に対応しきれない。
 言われるがまま。
 聞くしかない。
 受け止めるしかない。
 だってそうだろう。
 目の前にありえないものが転がっているのだから。
 血の気のない、反応もない、まるで作り物めいた、よどみ濁ったそれは、それでも間違いなくフルーリーの両目そのものにしか見えなかった。

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