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極小の中にあふれる無限45

 明るい灰色を持つ、貴公子然としたその青年は、その端正な顔に力強さを思わせる笑みを浮かべた。
 それを見る聴衆たちは、一様に思った。
 顔が――、シュタル王に似ている。
 なにより、その笑みが。
 そうはいっても、シュタル王自身はその青年ほどに整った顔立ちをしてはいなかった――が、その頬骨を、あるいは張ったエラを整えてしまえば、なるほどと思わせるだけの面影を、その青年に見たのだ。
 もちろん、これはグリードが意図して行ったことだ。
 何よりまず、そのことを知らしめる。
 憶測を抱かせる。
 いわば、伏線を張る――それはわかりやすいぐらいでちょうどいい。
 誰しもに経験があるのではないだろうか。
 自分の読みが当たった時のある種の達成感でもあり、ともすれば勘違い気味に抱く万能感。
 その衝撃が強ければ強いほど、喜びの花は咲き乱れ、記憶として刻み付けられる。
 心地よい話題作りであり、提供は、この国の未来を案じる国民たちのほとんどが等しく抱える渇きであった。
「――私の名前は、エルロ……。
 エルロ=フォグルド……と、名乗ってまいりました」
 画面の中央で自身を伝える青年の声に、それを見ている者の多くが隣のものとささやきあった。中には恥ずかしさで顔を真っ赤にして、その顔を隠すために俯き、肩を震わせる男の姿もあった。彼はさっきまで大きな声で吹聴していたからだ。きっとシュタル王の息子に違いない――、きっと隠し子だとか、人知れず安全な地で育て、王の訃報に答えたのだっ!と、周りの皆に己の推理を披露して聞かせていたからだ。
 それが、いざファミリーネームを聞いてみれば、よりにもよって「フォグルド」。あの悪名高き、准将の地位を務めたことのある男と同じもの。
 これが、恥ずかしくないわけがない。
 ――が、
「そう、私は名乗ってきたのです。名乗らされてきたのです。
 あの、フォグルドというものの義理の息子としてッ!」
 青年が続けたその言葉に、もはや目を血走らせて、その男は勢いよく顔を上げた。
 まさか、この展開は――。
 思いつくことは、大逆転のシナリオ。
 これまで男の血をここまで熱くさせることがあっただろうか。
 それどころか――、ふたを開けてみれば、
「私の本当の名前は、エルロ=ポラリス=シュタル――。
 父――、いえ。故王であるオリエント=ポラリス=シュタルの遺児でありますっ!」
 己が思い描いた通りの言葉を、その青年は口にしていた。
 感極まった男の眦に、熱い涙があふれてくる。
 もはや彼の頭の中には、その青年こそが前王遺児であり、しかも王子であり、偽物だといった閃きの余地すら彼の頭には存在しなかった。
 そう。
 それは各地で、各所で、人々の多くが、そのことを喜んだ。彼がどのような経緯でこの会見に現れたのか、どのような意図を持っているのか、そのことをこの時ばかりは忘れた。
 もちろん中には、「証拠なんてないじゃないかっ!」と、語り掛ける者もいたが、誰もがそのような人物の言葉に同調し、同意を示すようなことを積極的にはしなかった。それどころか、そんな水を差すようなことを言うものを、あからさまに敵視する者もいたし、それが暴力沙汰に発展することもあった。
 生前の故王を直接支えてきた者たち、彼らに近い者たちほど、この展開には肝を潰した。
 この時にこそ、本当の意味でシュタル王の王政は耐えたのだと嘆くものもいた。――とはいえ、その誰もがその一方でこれからの身の振り方――立ち回り、財産の維持に頭を回転させ始めたわけだが。
「私は生まれてすぐに、賢王たる前シュタル王の命により、当初は国の重鎮であったフォグルド准将の下に、預けられた。――が、その後、事態は急変し、フォグルド准将が刑に処されたのは、皆様もご存知の通りでございましょう。
 そこで、王は分水嶺に立たされました。
 フォグルドの息子として育てられた私を、改めて実子として迎え入れるのか、今はまだその時ではないと、別に真のおけるものに預けるのか――答えは後者でした。ただしそれは特定の里親のもとに出されたというわけではなく、多くの重鎮たちに見守られて育てられたのです。
 私は今も彼らに対して強い感謝の念を抱いております」
 ――その言葉に凍り付かされた。
 そして欲望の熱が、彼らに動きを取り戻させた。思考を激しく回転させた。
 これは、脅しなのだろうか――、それとも「余地」のようなものがあるという宣伝なのか。
 なるほどなるほど。
 もしこのまま彼が王位に就くようになったとして、その際必要なのは、やはりこの国について詳しい者たちだろう。 各地を納める者たちとのパイプがないことには、この国を管理するにあたって当然支障も出てくるだろう。もしかしたら、彼は「自分」に協力してほしいと誘いかけてくれているのかもしれない。それなら己の立場を早いうちに示した方がいいだろう。
 などなど。
 彼らが個別に定めた共通した見解は、「余計なことを口走っても旨みがなく、ならばこのまま墓の中までともに抱えていくだけである」といったものであった。

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