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極小の中にあふれる無限49

 王政の廃止――。その言葉の意味を国民の誰もが理解するよりも早く、フルーリーは続けた。
「もちろん。今ここで私の一存で決められる話でもございませんので、改めて議会を通してからの公式のものとなるでしょうが、――今回の件で私は痛感したのです。
 今回のような――不幸が起きたとき、その不幸は多くの皆さまを混乱に陥れました。
 一極集中が故のもろさだったと痛感しております。
 これからは、近隣諸国に倣うように、わが国も選挙を通じて代表を決めるような――、そのような制度を構成できれば――そう考えておりますの」
 それこそ、国民たちが再び混乱しそうになる中、フルーリーの演説は続く。
「ですが――、ですがですわ。
 先ほど、私たちは手を取り合うことで、確かに幸せを感じられた――、多くの方にそれを感じていただけたと確信しております。ですからっ!きっと、新しいこのシュタルの国づくりにおいても、それはかけがえのない絆となって、正しくこの国を発展言ってさせてくれる――そうじゃありませんかっ?!」
 国民の誰もがつい先ほどのことだったにもかかわらず、思い出していた。
 そうだ。ついさっきの話じゃないか。
 皆の気持ちが一体となったような、幸福感は。
「隣の人の顔を見てみてください。
 手をつないだ方の表情を思い出してみてください。
 私たちは王家の子供ではなく、この国の住民なのです。
 私たちこそが、この国の国民であり、この国の未来を創る者たちなのです。
 ですから皆さまっ!どうかっ!どうかっ!!
 私に力を――光をっ!明日という朝日をっ!
 雨が降っても、雪が降っても、夜の帳が下りても、訪れる朝を、待ちわびてしまうような、そんなシュタルをっ!!
 作っていこうじゃありませんかっ!!」
 悲劇を忘れたわけではなかった。
 混乱や戸惑いを完全に拭い去れたわけではなかった。
 けれども、隣に笑いあえた人がいる。
 それだけで、その事実だけで、これから先も何とかなりそうな――、事実としてなんとなっていくだろうことを確信して、国民たちはシュタルという国を讃える。
 カメラは身震いするのを抑え込むように左手首を右手で掴んで、ブレスレットの位置を調整するように左手は動かさず右手をこすりつけるフルーリーの姿を映し出していた。
 だから、国民の誰もが気が付かなかった。
 どこか、やり遂げたような表情を見せるフルーリーに、改めて喝采を送っていた。
 王族とはいえやはり緊張をするものなのか、――いや、さすがに今日だからこそ、あのようなことがあった後の会見だったからこそ、緊張したのかもしれないし、単にこれまでの疲労が一気に出てきたのかもしれない。フルーリーは汗ばんだのか額を白い手袋を嵌めた右手で拭い、どこか屈託ない笑顔を浮かべた。
 国民たちが異変に気が付いたのは、まさにこの時だった。
「どういうつもりだぁっ!!フルーリーッ!!?」
 カメラへ背を向け、振り向くフルーリーではあったが、画面はそんな彼女を追ってはくれなかった。
 おかしい――。
 国民たちは違和感を覚え――その理由にすぐに至った。
 怒声を放ったのは、グリードであった。
 国民たちは、フルーリーが王政撤廃を宣言した時から、より彼女にズームアップされていたせいで気が付かなかったが、一人懸命に平静を取り繕おうとして失敗している者がいたのだ。
 それがグリードであった。
 そう。
 彼は何もボランティアでこんな場所に出てきたわけではない。
 自分の欲望を満たすため、ここに来たのだ。
 そしてそれは途中まではうまくいっていたはずなのだ。
 このご時世に必要なものは、耳障りの良い、心地よい、「虚構」という名の「真実」なのであって、その気になれば「真実」なんて簡単にねつ造できてしまうのだ。例えば、自分自身が現王家の長男だというのに、存在自体がなかったように扱われたことだってそうだ。
 そんな自分がようやく、正常な形に――、王家の人間として人々に周知させることができた――、できたというのに。
 それを、この妹は。
 その肝心かなめの王政そのものを撤廃することを宣言したのだ。
 もちろん正式な発表ではないにせよ、きっと彼女はうまくやるのだろう。
 そんな確信がグリードにはあった。
「自分が何をやったのかわかっているのかっ?!」
 激高し、唾をまき散らし、かまわずに怒鳴るグリードではあったが、フルーリーは一歩も下がる気配がなかった。
 それどころか、どこか涼し気に彼に答える。
「自分が何をやったのかわかっておいでですの?」
 まったく同じような意味の言葉を、冷やかさすら感じさせる口調で返した。それはむしろ、懸命に感情を押し殺しているが故にも受け取ることができた。
「それは俺がっ!」
「あなたが父を殺したことを忘れたとは言わせませんわっ!!」
 国民たちはフルーリーの糾弾に度肝を抜かれた。
 まさか。
 彼こそがヒーローではなかったのか。
 お願いだから嘘だといってほしい――。
 そんな願いは、真実の前にあっさりと砕け散る。
 何より本人の口で。
「いまさらそんなことを言ってどうするというのだっ!!
 この国には私がっ!私たち王族が導かねばっ!!この国は終わってしまうのだっ!!!」
「それは傲慢に過ぎませんわ。王族などいなくてもこの国は明日を迎えますわっ!
 しかし、――、この国が一度終わってしまうということは否定まではしませんが」
「シュタル王国でなくなるからかっ!」
「もちろんですわ」
「ふざけた――」
「ふざけてなどいませんわ。それにこれからですわ。これから、このシュタルという国は始まるのですわ」
 フルーリーはまるで剣を振り下ろすかのように、右手を一閃させ、改めて己の意思を突きつけた。
「嘘も、偽りも、――殺人も、その教唆も。罪を罪として――、償わねばなりませんっ!
 罪を憎んで人を憎まずとはいいますように、私は罪こそを憎んではいますが――、罪だけをなかったことになどできはしないのですっ!!
 ですからお義兄様っ!潔く――、王族としてとおっしゃるのでしたら、なおのこと潔く、己が罪を償ってくださいましっ!!
 この国の王に返り咲くというのであれば、罪を雪いだ後でどうぞ、よしなに。
 それならば、私は何の文句ももうしあげませんわ」
 怒りも極まったか。
 グリードは真っ赤にした顔によく映える白い歯をむき出しにして、荒い呼気が故に、その歯の隙間からは粟立った唾が口の周りを汚していた。
「その偽りに、その罪とやらの犠牲になってきたのは俺自身だぁああっ!!!」
 グリードは、自分たちしか残っていないこの会見場で、怒声と共に、腰に穿いた剣を抜刀した。

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