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極小の中にあふれる無限50

 あとは一瞬だった。
「――動くなッ!!」
 圧縮したかのような轟声に、室内は騒然となる――者もいたが、その声にほとんど反射で対応する者たちが多くいた。
 声をあげ、グリードたちの一派とフルーリーが残された部屋へと入ってきたのは、近衛部隊長でもあるファンベルン准将であり、彼に引き連れられるようにして部下たちもなだれ込む手筈であったが、それは叶わなかった。そんなファンベルンの出鼻をくじくように、真っ先に彼と切り結ぶことで入口に彼を抑え込み通路を塞いだものがいたからだ。それは、フルーリーを睨みつけ抜刀したはずの、グリードその人であった。
「どこから出歯亀してたのかなぁ、准将様ともあろうかたがぁあああっ?!」
 ここまで至ったとあれば、グリードはもはや自制するような考えを放棄していた。
「――姫様が今後どうであれ――、今は間違いなく王族であり――、王国の法は生きているッ!お前が何をしたのか、何をしてこうなったのか、それはおいおい調べるとして、……だ。
 王族に対し抜刀したその罪――。極刑に値するッ!!」
「そんなシミが付いて、黴が食い散らかしたような法律があったよねぇっ!!」
 そう、この国に古くからある法律では、王に対するいわゆる不敬罪のうち、暗殺につながると目された事柄に関しては、厳罰をもって対処するのがかねてよりの凡例であった。
 そう。
 グリードはそのことを知っていた。
 知っていて、この状況を、ほかでもない近衛部隊隊長に見られたこと――。
 残されている手は、逃げの一手以外ほかなかった。
「――一応、僕もその王族ってやつなんだがねっ!?」
 しかし、ファンベルンはいささかも動じることなく、
「そのような記録は、ありませんなっ!!」
 そっけなく返して、再び互いの剣を打ち付けあった。
「やっぱりそう答えるよねっ!」
 思わずグリードは自嘲の声を上げそうになった。
 この時ほど、――これまでも思わないでもなかったが、これほどまでに自分自身を道化師のように感じたことはなかった。
 何のために生まれ、何のために生きて、何のためにここへ来たのか、辿り着いたのか。
 まったくもって意味が分からない。
 ただ一人。
 勝手にからまわりしていたからじゃないか――。
 けれども、本当にそう自嘲して、剣を握る手を緩めることを、彼は良しとしなかった。
 何しろ後ろには――、彼にとって、どれだけ疎ましく思うことがあっても、それでもかけがえのない、彼が引き連れることを決めた、仲間たちがいたからだ。
 だから、彼は引かなかった。
 それどころか、背中に力を入れて、押し返そうとした。
 元々グリードの剣は、攻めに徹するにしても、力押しを得意とするものではない。
 見た目にふさわしい、舞うような剣戟こそが、彼の持ち味だった。
 それでも今この場で引くわけにはいかなかった。
 自分こそが今、ここで彼らの突入の妨げとなっているのだから。
 しかし、対峙するのは老齢ではなく、まだ若き准将であるファンベルン。
 彼自身も技量はさることながら、豪快な剣捌きこそを得意としていた。
 技量よりも腕力に頼ってしまうということでもあり、それを老齢な師達に指摘されることも多いが、ことこの場面においては、独壇場といってもよかった。
 ファンベルンはわずかに力を緩め、グリードを引き込むように、彼の重心を崩し、即座に押し返した。
 その圧にあらがうこともできず、床から足が離れたグリードは、大きく部屋の奥へと押しやられた。
 ――しかし、そんなグリードとファンベルンの間に割って入ろうとする者がいた。
 グラトニー。
 本来であれば、エンヴィーもそれに続きたかったが、彼はここに来る前にグリードにやられた怪我が完治していたわけもなく、踏み込み、ファンベルンと切り結ぶだけの体力を有してはなかったからだ。
 グラトニーはこの状況が、グリードのように理解していたわけではなかった。
 だが、このままでは自らも捕まってしまう――という強迫観念だけはあった。
 何しろ自分こそが今回の実行犯であり、つい先ほどにもそのあたりをフルーリーで責められたばかりだ。
 本当は、あのままなにもせずやり過ごしていれば、彼は何のお咎めもなかったはずなのだ。
 仮にグリードが逮捕され、すべてを洗いざらい白状したとしても、証拠などない。――ただ、フルーリーのあまりにも強すぎる発言力と、先ほど聞かされた、ねじくれたような王国の暗部が、どう自分に災いをもたらすかわからないという懸念材料はあるわけだが。
 ただ、そう考える前に、理解が及ぶ前に、身体は動いてしまっていた。
 動かなくなる前に、動き回ることを選んでいた。
 それを無策や、考えなしと笑う者もいるだろう。
 愚かだと。
 罵り、謗る者もいるだろう。
 だが、時として――。
 時として、この直感にも似た判断が、明暗を分けることだってある。
 瞬時に飛び込んだがゆえに、命を落とすことを免れたケースなど、枚挙にいとまもない。
 だが――、そんな彼は。
 こんなことが待ち受けているなど、露とも思っていなかった。
 まさか、自身と同じように、この線上へ飛び込むものがいるなど。
 それがドレスをまとったものだなんて。
 思いもしなかった。
 まるで抱き留めようとするかのように。
 両手を広げて――。
 両腕を広げて――。
 あの日。
 幼かったあの日。
 母さんがしたように。
 ダメだって。
 教えてくれたように。
 そのせいで――、自分の命を落としてしま――。
 あの男――。
 自分を連れて――。
 母さん――が、やめてって――僕もやめてって――。
 あの日、あの時。
 母さんが振り払われて――、言ったのに、僕が……。
 熱い――、あったかい――。
 鉄の――、赤……、匂い。
 あの男――、あの男ッ!あの男ぉおおおおおっ!!!
 押さえつけられて、押し付けられて、口に入れられた、黴の生えたパンの味を思い出す――。
 おいしかった――。おいしかった――、おしかった……。
 命の味――。
 命が――、生きていることが――、空腹が怖い――。
 ダメなのに――、ダメだって、ダメ……。
「ダメだよ」
 グラトニーは確かにその声を耳にした。

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