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極小の中にあふれる無限51

 急激に浮上する意識、収束し焦点を結んだ視界。
 そこでグラトニーは目にしていた。
 見たくないと思いながらも、磁力に惹かれるように、ゆっくりと、しかし近づくにつれて早く――瞬時に。
 それは異様――であった。
 まるで、よく見ていた色をした、影法師のようなものが小さな体から懸命に腕を伸ばすようにして、グラトニーの振り下ろしかけていた剣を受け止めていた。
 なにより、異様だったのは。
 初めはそれが何なのかいまいちよくわからなかった。
 理解して、いったいいつ以来だろうと自問した。
 そこに映っていたのは、血管が透けて見えるほどに白い肌を持つ腕だった。
 それを見て、グラトニーは己がアルビノだったということを思い出した。
 今この時、自らの剣を受け止めてくれたそれが何なのかをグラトニーは理解した。
 目の前の――、ちょうどあの日の自分と同じぐらいのそれらが、いったい何なのかを。
 とはいっても、どこかオカルトじみた解釈はしなかった。
 そんなわけねぇさと噴き出しそうになるぐらいに。
 いつもの自分の肌と同じ色をしたそれらの集まりが目の前にあり、普段は覆いつくされている自分の姿が外気に触れているという事実。
「助かった――ぜ。ありがと――」
 ずきん。
 幸い室内だったからか、皮膚が即座にやけどしたわけではなかったが、しかしそれ以上に激しい頭痛が、脈拍と共に襲い掛かってきた。
 まるで頭の中の血管が弾けたかのような破裂感。
 何事かと考える前に、立て続けに頭痛が襲い来る。
 巨大なうねりを思わせる頭痛が、脈拍と共に押し寄せてくる。
 それよりかは、満ち潮でも来るかのように、鼓動が加速するせいで、その感覚も短くなっていく。
「グラトニーっ?!」
 そう近くで叫ばれたような気がした――が、音そのものは高波に掻き消されたように、ほとんど届かなかった。
 自分の耳のあたりを風が吹き付けるのを感じたというのにだ。
 そして、狂い叫ぶ頭痛が作り出すセピア色の砂嵐のようなノイズが次第に像を結んでいくように見えた。初めは、錯覚だろうと思っていたが、次第にそれが生々しく立体感を取り、その質感さえも思わせる、光景へと変わっていく。
 幼いグラトニーを連れて行こうとしている男がいる。
 男の後ろには、女の子のようにも見える整った顔立ちの男の子がいる――自分よりも年上の。
 抵抗するグラトニーを、男が嗤う。
「まだ抵抗する気かッ!いいだろうっ!お前が俺を斃せたら、連れて行かないでおいてやるっ!!」
 今にして思えば、それはどういう意味だったのか。
 斃されれば連れていくことなどできたはずもなく。
 単に、それしか――、殺すことでしか、自分を連れ去ることをやめさせることはできないといっていたのであろうし、負けるはずもないと思っていたのだろう。
 グラトニーはそのものの名前を知っていた。
 実の父なのだから。
 実の父――フォグルド。
 この国の准将であり、母はその愛人であり、かつては腕の立つ女性騎士として知られていた。
 そんな父と母のロマンスは知らない。
 何があったのか、知らされていない。
 けれども、グラトニーは思った。
 それなら、本気を出さないと――。
 彼の言う本気がどういったものなのか。
 お父さんにすごいなとほめてもらいたい――のか。
 どうせお父さんならあっさりさばいてしまうんだろうな――とか。
 そんな子供にとっては絶対的といっていい、憧れた父を前にして、けれども少年は母といることを望み、それを証明したかった。
 だからこその全力。
 やれることをやりつくさないと、お父さんをがっかりさせてしまう。
 グラトニーは自身の外皮として擬態するナノマシンたちをわざと置き去りにして――、一度そこに皆の視線を集めて、驚かせて、軽くなった体で、しかし思い外皮を背負っていたことで鍛え上げられた体躯はそれでもしっかりと地面を掴むようにして、滑空するような勢いで父の下へと迫った。
 その動きは、子供のそれではなかった。
 母の教えがよかったのか、母譲りの剣のキレなのか。
 身軽さゆえの切り込み後の跳躍は、フォグルドが反応するよりも早く、彼の心臓目がけて飛び出していた。
 フォグルドは己の失策を呪った。
 あまりにもうかつだったのだ。
 目の前の、自分の息子を引き取りに来たのは、「使える」とわかったからこそだ。
 まさか、自分の予想をも超えてくるとは。
 激情に枯れるよりも先に、己の失策に血の気が引く思いだった――が。
 そこに割り込む者がいた。
 息子の母親――、自分の愛人の姿だった。
 彼に剣を教えた彼女こそが、彼を育て上げた彼女だけが、グラトニーさえ気づいていなかったが、彼のその隠し玉さえも理解していた。
 母はその身を捧げながら、苦悩していた。
 母は、フォグルドの性格をよく知っていた。
 自分を孕ませた男なのだから。
 どのような趣味を隠し持っているのかも。
 しかし、それと同時に――。
 彼がこの国の重鎮であることも事実であった。
 王家の信用も篤い――そう彼女には見えていた。
 なにしろ、王の実子を預かることになり、事実そうしていたのだから。
 そんな男を殺せたら――、多少の混乱は招いても、それでもどうにかはなるのかもしれない。とはいっても、それはそれでふさわしくはないし、間違いなくこの暮らしは終わってしまう。国の重鎮を殺害した少年というレッテルを張りつけられ、生きていくことになる。
 だが、それでもマシなのだろうと思ったのだ。
 おそらく、息子の一撃は、フォグルドの命にまでは届かない。仮に自分が息子を抑え込んだとしても、恥をかかされたことに男は怒り狂うことだろう。
 そうなれば、あの男は――。
 欲と怒りにまみれるあの男なら、どうするか――?
 息子のその先の姿など、考えることすらしたくなかった。
 そう考えているうちに、気が付けば息子の剣に自らの命を、彼女は差し出していた。
 それを見て、命が助かったと感じたフォグルドが感じたことは。
「滑稽――なり」
 こみ上げてくる愉悦であり、それを隠すこともなく声高に哂って誇示した。
 常軌を逸脱する彼の嗜虐心は、大いに満たされていた。
 故に己を驚かせたことも、ある種のスパイスのようであると思えば、それがよりこの高揚感を高まらせてくれたのだと頷くことができた。
 自らの母に意図せずとも剣を突き立て、自らの息子を庇うために命を捧げた母。
 消えゆく命の中、その灯を涙を流して見つめながら母の名を呼ぶ少年の、なんと愛らしいことか。
 なるほどなるほど。
 繰り返しうなずく。
 あれだけの動きを見せるのであれば、価値がある――。
 飼いならす手間をかけるだけの価値が。
 その過程を思いながら、エルロを片手で呼び寄せて、彼の頭を撫でまわした。
「大事に扱えよ――」
 そう部下に厳命し、自分はその場を離れた。
 その後地下牢へと放り込まれ、実の父と再会したとき、あの黴パンを押し込められた。
 本当は死にたかったのに――。
 身体は生きることを求めてしまった。
 あの日の自分は、途中からの記憶がない。
 剣を握っていること、そこへ母の血が伝いきたこと、そのぬくもり、におい。
 そのあたりからあいまいになっていた。
 そんな彼にいくばくかの安定を与えてくれたのは、
「この国を壊そう」
 そう言って手を差し伸べてくれた、エルロだった。

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