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極小の中にあふれる無限53

 この光景に再び場は凍り付いた。
 何が起きたのかが理解できない。
 これまで切りあいを演じていたグリードも、目の前の状況に思考を巡らせるだけの冷静さを取り戻していた。
 そんな、彼の冷静さが自問する声は、ほかの者たちと同様であった。
――これは、いったい何が起きた?――
 剣を両手で握り――、押し込み、結果それ以上動かなくなった剣をフルーリーは見つめているように見えた。
 その表情はどこか虚ろで。
 だからグラトニーは声をかけた。
「よぉ、バタ姫?寝てんのか?」
「――――」
 そんなグラトニーに答えず、それでも呼ばれたことだけは理解できたように、彼女はゆっくりと顔をあげる。
「まあ――、なんだ。俺を恨む気持ちは、いやっていうほどわかってるんだ」
 俺がそうだったから。
 グラトニーはその言葉を飲み込み、続ける。
「でも、あれだ。――申し訳ない話ではあるんだが、あんたの攻撃なんて比喩でも何でもなく寝ていてもよけれられちまうんだわ、俺」
 そう。
 グラトニーはフルーリーが剣を手にするその両手首を抑え込むようにして、彼女の刃を躱した上で、固定していた。
――なにより――
 グラトニーは語りながら、強い力でもって、彼女が両手で握りしめる剣を奪い取った。
「あんたの手を、俺みたいなやつの血で穢すわけにも――、そもそもこの国をひっぱていくあんたを、犯罪者にするわけにもいかねぇし、そんなあんたを見たくねぇ」
――だから――
「これで俺も不敬罪ってやつかな?」
 フルーリーを突き飛ばし――。
「あ――やめ――」
 その衝撃で我に返ったフルーリーは瞬時に目の前の状況を理解したように叫ぶ――、
「――もう、いいよな」
「てぇッーーーー!!!」
 も、届かず……。
 グラトニーは自らの腹に手にした剣を突き立てた。
 しばらく、そのままの姿勢で固まっていたグラトニーであったが、損傷した内臓で発生した出血が行き場を失い口から零れ落ちると、まるでそれこそが体を保持していたかのように、ゆっくりと前のめりに崩れ落ちた。
 その光景を目の前で眺めながら、震える唇で言葉を紡ぐ。
「なにを、なにをやっているんですのっ!!あなたはっ!!!?」
 少女はとっさに駆け寄ろうとしたが、それは近衛の長であるファンベルン准将によって防がれた。
「姫様ッ!おやめくださいッ!!
 ドレスが血で汚れてしまいますっ!!」
「構うものですかッ!かまいませんわッ!!だから、離して――、離してッ!」
「お許しください、それだけは、それだけは――、なにとぞっ!
 ――応急処置をッ、急げッ!!」
「――医者は、ここにいるっ」
「――あんた……、まさ――いや、あなたなら――必要なものをおっしゃってください」
「とりあえず、止血さね――このまま剣ごと患部を固定するから、止血帯――早くしなっ」
 一瞬にしてそこは生命を繋ぐための場となった。
 尚、グリードといえばファンベルンがフルーリーの身柄を確保したときに、彼の部下によって取り押さえられていた。とはいっても、この時にはすでにグリード自身が茫然自失であったため、その拘束には特に近衛兵の手を煩わせることはなかった。
 あれだけ血なまぐさい――いわば兄弟げんかを繰り広げていながら、わずか一瞬のうちに自決を図ったグラトニーを見て、自分は何をしていたのかと、震える手を見つめるようにして自責の念に駆られているようであった。
 エンヴィーは這いずるようにして、グラトニーに近寄ろうとしていたが、それを察したスロウスがゆっくりと首を振り、近寄るなと言外に告げた後、安心させるように力強く頷くのを見て、顔をくしゃくしゃにして、声を押し殺して泣いた。なにより、自身も重傷ということもあり、その身柄はすぐに近衛部隊直属の衛生兵たちにより保護され、治療室へと運ばれていった。
 あわただしく周りが動く中、取り残されたような心境でフルーリーはたたずんでいた。
 ファンベルンに両肩を掴まれているせいで、ここから動くこともできず、それにもし動けたとしても何もできない――。
 その焦燥感で顔を切なげにゆがめていた。
「――姫様……」
 申し上げにくいことですが、と前置きしてファンベルンは続けた。
「国民たちへ――、御身が無事であるというご報告をいただけませんか」
 そう、国民たちは見ていた。
 エルロがフルーリーへ斬りかかる様を。
 しかし、彼らはその直後を知らない。
 なぜなら、万が一の事態を備え、放映側が映像を遮断したのだ。
 そう、撮影クルーたちはフルーリーたちの会見が終わり退出したが――、別室からの遠隔操作による撮影を続けていた。
 ほかならぬ、フルーリーの指示によって。
 彼女が事前に見せた、「手首をさするようなしぐさ」は、このためのジェスチャーによる指示であった。
 だから、彼らは表向きには撮影が終わったように、各装置の電源が切れたように見せながら、ことの顛末の一部始終を見届けることとなってしまった。
 フルーリーが絶命するというような最悪の結末を避けることはできたが、とはいえそれは結果論であり、その可能性があったあの段階では、放映を強制的に中断させることを選んだのだ。
 フルーリーに限らず、人が死ぬ様を大っぴらに後悔してよいはずがない――という、倫理的な観点によって。
 何よりそれは功を奏していた。
 だが、まさかあんなことになるとは――。フルーリーが斬りかかるとは。
 とはいえ、あの時の彼女のただならぬ様子にも皆が気付いており、何かが二人の間であったのだろうと、推測するのみであった。
 とはいえ――。
 このままでいいわけもない。
 いたずらに国民の不安をあおるわけにもいかない。
 なにしろ、さっきの今なのだ。
 ようやく、前を向こうとしたその時だったのだ。
 だから、そんな不安は早々に取り除くべきであり、それをフルーリーも十分に心得ていた。
 拭い去れない精神的な疲労がにじみ出てはいたが、それでも気丈にふるまい、彼女はこの件における終息宣言を行い、彼らを安心させるのだった。
 ――が、しかし。
 彼女はそのままベッドに直行することはできなかった。
 なぜなら。
 スロウスの――、プラタナスからの指示で、彼女をグラトニーの手術に立ち会うように命じたからだ。
 もちろん、ガラス越しにではあったが。

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