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極小の中にあふれる無限62

 ここで重要なことは、リューネはフルーリーのことを愛していたということだ。
 女として敵愾心を燃やし、嫉妬を覚えながらも、それでも実の娘として、相応に愛情を感じてもいた。
 当然これも彼女の心を蝕む要因となった。
 実の娘を憎めば憎むほど、疎めば疎むほど、いざ愛情を抱いた時に抱える彼女の自己嫌悪は深まってしまう。
 結局、結婚生活も5年目を過ぎ、フルーリーが4歳になったころ、彼女は表舞台に立たなくなった。
 精神状態的にも難しかったし、それが体調に現れ、一見して彼女が普通の健康状態ではないと分かってしまうため、国としても対面上表舞台に出すわけにはいかなかったのだ。
 そんな彼女に、シュタル王をはじめとして、打てる限りの手を打った。
 優秀な医者を連れてきたし――プラタナスも含まれている――、お忍びで旅行に連れ出すこともあった。
 けれども、どんなに優秀な精神科医であっても、彼女の精神状態を回復させるには至らず――プラタナスに関しては、身体的な治療は行ったものの、精神科医としての専門性がないこともあって、そちらは専門医師に委ねるかたちをとっていた――、王と二人だけで旅行に出かけても、さしたる効果がなかった。それどころか逆効果であったともいえた。
 リューネはシュタル王と二人だけでいられるのが、旅行に出ている短い時間だけということを理解していたし、それでもその短い時間を喜べればまだよかったのかもしれなかったのだが、もはやそう感じるだけの心のゆとりが彼女には残されていなかった。
 そのくせ、シュタル王は王妃のためだと十分に理解していながらも、自分自身でもそう口にしながらも、通りすがる若くて美しい女性たちに視線を奪われてしまうといった有様であった。
 もっとも、それをどんよりとした瞳で横目に見るリューネではあったが、もはや声に出すこともなかった。
 そんなリューネをそれでもざわつかせることもあった。
 それは、シュタル王がフルーリーの写真を眺めている時のことだった。
 フルーリーはこの時護衛付きでリューネの実家に預けられていたのだが、娘と離れ離れになっているシュタル王は、携帯電話に収めてある娘の写真を見ながら、微笑みかけていた。
 男親だったらさほど珍しくもないのかもしれない――が、リューネにはその時の王の笑みが、抑えきれない劣情が滲みだしているような醜悪なものに見えて仕方がなかった。
 この時、彼女の中でありえない、もはや化学反応にも近い、異常な結論が結晶していた。
 彼女は娘を愛していた。
 それは、少なくとも人並み程度には。
 一人の母親として恥ずかしくないほどには。
 だから、彼女は母親として娘を娘の父から――、自分の夫から護らなければいけないと思い立った。
 だから彼女は、そんな愛する娘を憐れな夫から護るために、彼女の魅力を奪うことを決めた。
 そう、彼女の輝かしいサンライズと謳われるようになっていた瞳を奪うことにしたのだ。
 そうしたら、きっと夫は娘の魅力が失われたことを嘆き、正気に戻ってくれるに違いない。
 そして、また自分のことを見てくれるに違いない。
 娘も、父親の影におびえるなどといった悲しい未来を迎えることなく、健やかに育っていくに違いない。
 ああ、それはなんてすばらしい未来なんだろう。
 彼女はそう真剣に考えていた。
 壊れた心は、それこそが救いなのだと、本気で信じていた。
 だから彼女は、疲れたような表情で、それでも心からの笑みを浮かべ、フルーリーを手招きして呼び寄せたあの日、彼女の瞳に裁断ばさみを突き立てた。
 ――もっとも、そばに控えておくことを厳命されていたSPによって、刃先が脳に届く前に彼女の手首は取り押さえられていたが、それでも眼球は完全に貫かれてしまっていた。
 あたりは当然のように騒然となり、リューネの処遇をどうするか、フルーリーの目のことを同国民に説明するかを話し合った。
 そうして出された結論は、「王妃は病で倒れ、そのまま息を引き取った」というものであり、「フルーリーの目には何も問題はない」ということで意見が統一された。
 王室にとって幸い――というべきなのか、疑問の余地はあるが――だったのは、リューネがしばらくマスコミの前に姿を現すことがなかったということだった。
 実はかねてより体調を崩し、床に臥せっていた――としてしまえば、彼女が死んだと発表しても、国民としても納得がいく話であった。
 フルーリーの失明については、彼女の健康診断を行うにあたり、そもそも学校側に送り込まれる医師さえわかっていれば、抱き込むことは容易だった。
 ちなみに、その医師たちもフルーリーが本当のところで失明をしているとはしらない。
 なにしろ、彼女の視力検査においてはあらかじめ、指し示す順番を決めておいたわけだが、それも彼女が実は視力を悪いのを隠したいからだ――と誤魔化されていたためだ。
 それに、城内のかかりつけの医師が、自分が普段しっかりと体調管理を行っていると後押ししたことも、その隠蔽には一役買っていた。
 もちろんそれだけでも、一般家庭なら十分なほどの報酬が血税から支払われていたわけであるが。

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