FC2ブログ
少しでも前へっ!
足踏みのような歩幅でも、少しでも前進できればと思って、書き続けています。※リンクフリーです♪連絡いただけましたら喜んで相互させていただきます。
FC2プロフ



最新記事



カテゴリ



最新コメント



最新トラックバック



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ご訪問者数



☆ブログランキング☆
★参加していますっ★



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



天気予報


-天気予報コム- -FC2-



スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



極小の中にあふれる無限70

「僕が目覚めたら――ねぇ」
「……どうかしたんですの?」
 自嘲するような笑みを浮かべたグラトニーのトラウマに、フルーリーはその笑みの意味を問うた。その笑みの意味することこそが、フルーリーが知りたいことのカギになっているように思えたからだ。
「いや、ね?多分――、僕には目覚める気がないんだよ」
「――目覚める気が――」
「早い話が、死にたいって、そういうことだね」
「…………」
 どこか覚悟はしているつもりだった。
 ――とはいえ、知り合って日も浅い。
 いくらこうして看病を続けてきたとはいえ、もともとは知らない人間だったのだ。
 知らない人間で、知らない人生を歩んで、知らないままに死んでいく。
 そんな間柄だったはずだ。
 ましてや彼は、自分の父親の仇に間違いなく、その一点に揺らぎはない。
 本来であれば、グラトニーの死は、――ある種の、昏い喜びがあってもおかしくはなかったはずなのだ。
 それなのに、どうだ。
 覚悟していたのだ。
 彼が目覚めないことを覚悟する心。
 それは、何も彼が死に至ることで真実があやふやになってしまう覚悟――などといった回りくどいものなどではなく、ただ純粋に、彼が死んでしまう、命が失われてしまうということに対する覚悟であって、本来であれば、彼のような立場の人間に抱くことはそうないような感情であった。
 ただ単に、そんな彼にまで善を尽くしたのだという自己満足が欲しいだけなのかと、思わず自分の心を疑い、そう決めつけたくもなったが、あいにくというべきか、それは間違いなく悲しみとして彼女の心を打った。
 そのことに納得がいったわけではなかったが、かといって今そのことを悩むときでもない。
 今は踏み込むべきときなのだ。
「――あなたはそれでいいんですの?」
 フルーリーが投げたその一石は、
「僕にはどうしようもないからね」
 彼女が予想した返答にぴったりと重なるものだった。
「くどいようですが、本当にあなたはグラトニーのトラウマなんですの?」
「まったく、本当だね」
 そう言って苦笑して見せる彼は、困った笑みを浮かべて言う。
「われ思う故にわれあり――なら、僕が僕のことを『僕自身のトラウマ』だと思うことが、僕が僕自身のトラウマであることだと思うんだけど……証明はできないけどね」
 そう言って肩をすくめる姿は、誰かを彷彿とさせるものがあった。
「その通りですわ。
 確かにそれを証明する手立てはないかもしれない――ですけれど、こうも言えるのでは?
 あなたはあなた自身が『グラトニーのトラウマだと思い込まされている』と」
「……興味深い――と、返答しておこうかな?」
 にんまりとした笑みを浮かべて彼は言う。
「けれど……、さ?それだと、あんまりにもこう――救いがなくない?
 じゃあ僕は誰なのさ?今までそうやって信じて生きてきた――って言えるかはわからないけど、過ごしてきた僕はなんなのさってさ」
 表情こそ笑顔――ではあったが、どこか作り物めいたその笑顔と、隠し切れていない責めるような口調は、彼の隠し切れない心情を如実に語っていた。
 それはそうだろう。
 彼が語る言葉が、彼にとっての真実に他ならないのであれば、自身の存在を偽りだと、本物ではないと否定されたことになる。
「確かに――どこにも救いなんてありませんわ。
 あなたは傷つくだけですし、私も得することがありません――が、それを自覚していただくことで、明確にすることで、グラトニーを起こすことができる可能性がある手が一つありますの」
「――どんな手なのかな?」
「それが大事なのですけれど、そのことをお伝えする前に、あなたには申し訳ないですけれど、確認したいことがありますの。
 あなたは、グラトニーのトラウマだと名乗るあなたは、グラトニーに答えることはできますの?」
「――どういういみ?」
 わずかに考え込むも意味が理解できないと彼は答えた。もっとも彼にしてみれば、先ほどから自身の存在を疑うようなことしか言わないフルーリーとこれ以上会話をしたくないという思いもあって、真剣に彼女の言葉を考えたわけではなかったのだが。
「グラトニーのトラウマだというあなたは、グラトニーと会話することができるんですの?」
「できないよ」
 彼はやれやれといった風に首を振った。
「声は聞こえる。けれども、僕の声は届かない。
 こんな一方的な関係で会話なんて言えないでしょ?」
「――なるほど……」
「僕はここに閉じ込められているようなもんだよ。
 護るためって言いながら、この場所に監禁されている。
 『僕自身』はそれを正しいことだって思ったのかもしれないけれど、――まあ、僕はトラウマだから、こんなことを思うわけじゃあないけど、普通の人間だったら『虐待』っていうよね?」

関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック URL
http://hyosayblog.blog.fc2.com/tb.php/519-40dd61a9



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。